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イベントレポート

日  時:令和6(2024)年12月12日(木)13:30~15:45
会  場:ホテルエミシア東京立川 3階サンマルコグランデ
講 演 会:おいしい野菜のチカラを知る ~畑から食卓へ健康を届けるために~
講  師:丹羽 真清さん(一般社団法人食と農の生命科学研究会 代表理事)
共  催:東京都消費者月間実行委員会/東京都農業経営者クラブ
      一般社団法人東京都農業会議/公益財団法人東京都農林水産振興財団
参加人数:92人

 東京の農業を身近に感じ、東京の生産者を応援する機会として「食と農セミナー」を開催しました。はじめに、東京都消費者月間実行委員会 眞鍋重朗委員長、(一社)東京都農業会議 松本一宏副会長、(公財)東京都農林水産振興財団 寺崎久明理事長から開会のあいさつがあり、続いて(一社)食と農の生命科学研究会代表理事の丹羽真清さんを講師にお迎えし、「おいしい野菜のチカラを知る~畑から食卓へ健康を届けるために~」と題し、野菜を通じて健康を届ける取り組みについて講演いただきました。講演後にJA東京中央会制作のYouTube動画「未来をつなぐ都市農業」を視聴した後、消費者と農業者・行政とで交流会を行い、テーブル毎に活発な意見交換がされました。最後に東京都農業経営者クラブ 吉野光政会長からの挨拶で会を締めくくりました。
 以下、講演会の報告です。


講師の丹羽真清さん

日本人の健康寿命と食生活の関係

 おいしい野菜のチカラの研究を続けてきて、野菜で健康をという考えを広めたいと活動しています。日本人の平均寿命は84歳。医療費は年間約47兆円(2023年)。人生100年時代、医療費の増加を避け、健康寿命を延ばすことが重要です。
 食生活はひと時代前からガラリと変わってきています。100歳以上の方へのアンケートでは、90%の人が毎食主食を摂っています。主食を摂ることは体のエネルギーを補給し、脳にエネルギーを運ぶ重要な役割があります。米にはケイ素ホウ素などのミネラルが豊富、骨が元気になります。また、ほとんど毎日野菜を食べている人は88%にのぼります。農水省は一日350gの野菜摂取を推奨していますが、平均的な摂取量は100g位足りません。高齢になると量を食べられなくなりますが、野菜の質を重視して栄養価の高い野菜を摂取することが健康長寿に繋がります。
 農業従事者の方には、「農産物は売るものであるが、食べ物でもある」ということを意識して、自分が作る野菜は人の体にどう良いか、おいしいこと、体をつくること、こういう栄養を含む野菜栽培をしてほしいと思います。

食と野菜の機能性

 食と野菜の機能性には1次、2次、3次機能があります。1次機能は栄養を摂ること、タンパク質・糖質・脂質の3大栄養素に加え、ビタミン、ミネラル、食物繊維などを摂ること。特に食物繊維は長寿と健康の基本で、主に穀類や野菜から摂取することが推奨されています。2次機能は香りや食感、色や嗜好性など食事を楽しむ要素です。3次機能は生体調節機能です。生体機能を調節する作用のある植物の化学成分(フィトケミカル)を摂取することで、健康を維持し、老化防止や病気予防に役立ちます。
 とりわけ生の野菜と生の魚から酵素を摂取することが大切です。酵素が体内で生産できなくなると健康維持が困難になり衰弱します。食物から酵素を摂ることで年を重ねても元気でいられます。5大栄養素のタンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、第6の食物繊維と第7のフィトケミカル、そして第8の機能として酵素を毎日の食事に取り入れ、栄養バランスのとれた食生活を送りましょう。


講師資料より

野菜と健康の関係

 野菜の摂取には抗酸化力や免疫力を高める効果があります。食物繊維の摂取は腸内細菌を育て血糖値の上昇を防ぎ、心筋梗塞のリスクが低減することが知られています。野菜に含まれるフィトケミカル、特に色からとれるポリフェノールとカロテノイドは活性酸素による体の疲労や老化を防ぎ、野菜に付いている菌が産生するLPSは免疫を整える働きがあります。また食事の最後に果物を食べることで食べ物酵素が消化酵素を助け消化を良くすることができます。
 米国国立がん研究所によるデザイナーフーズリスト(1990年)には、老化とがんを防ぐ食品が掲載されています。これは植物性食品によるがん予防計画といわれ、ピラミッドの上の方に行くほど重要度が高くなります。日本人のためのリストには、さらにキノコや海藻、ゴマ、シソ(大葉)なども含まれていて、特に日本人の腸内環境に適した内容となっています。このリストとともに、バランスの良い食生活の合言葉「まごたちわやさしい」に酵素の「こ」を加え、「まごたちわやさしいこ」の食品を毎日摂取したか確認してみるとよいでしょう。
*豆類・胡麻など種実類・卵類・乳類・わかめなど海藻類・野菜類・魚類・椎茸類・いも類・酵素


講師資料より

野菜は中身で買う時代

 野菜は外見ではなく中身で選ぶことが大切ですが、スーパーでは中身の判断が難しいです。野菜の本来の評価は以下の項目でするべきと考えています。
①形の評価(形・色・光沢、傷がない、病害虫に侵されていない)
②安全性(GAPの取得、トレーサビリティ、エビデンス(科学的根拠)があること)
③おいしさ(食べて美味しい、食感などの感覚)
④中身の評価(抗酸化力、免疫調整力、解毒の力、酵素の力)
⑤旬のもの(多く出回る、一番おいしい時期、栄養価が高い、四季を感じる)

野菜の旬

 異常気象などの影響や、タネの品種改良によって日本全国で同じ野菜が作れるようになり、旬がわかりにくくなっています。品種改良によって安定して収穫ができ、流通に都合がよく、病害虫に強いなどメリットもありますが、本当に食べておいしいかは疑問があります。
 抗酸化力、免疫調整力、解毒力、酵素の力、4つの機能性から見た旬の野菜の特徴を紹介します。

①春が旬の野菜:解毒のチカラ
 フキノトウやタラの芽といった山菜、アブラナ科に含まれるグルタチオン、ユリ科の硫黄化合物には不要なものを水溶性にして外に出す解毒作用があります。ケルセチン・クロロフィル(葉緑素)を含む野菜は毒素を絡めて便として外に出します。

②夏が旬の野菜:抗酸化系のチカラ
 色が鮮やかな緑黄色野菜、アクがある野菜、空気に触れると色が変わりやすい野菜です。抗酸化成分であるビタミンCやポリフェノールを多く含み、摂取することで活性酸素を取り除く作用があります。

③秋が旬の野菜:酵素のチカラ
 栗、クルミ、イモ類・果実類など。生のものには食物酵素を多く含んでいて一緒に食べた物の消化・吸収を助けます。

④冬が旬の野菜:免疫系のチカラ
 ダイコン、カブ、ネギ、白菜など白い野菜は硫黄系のピリ辛い成分を含んでいます。食物繊維は腸内細菌の餌になり酪酸を産生することからアレルギーの予防に繋がります。


講師資料より

データから見る活性酸素と健康への影響

 人が呼吸で取り込んだ酸素の2%は活性酸素に代わります。活性酸素はウイルスに対抗するなど体内で重要な役割を果たすと同時に、過剰になると自分の細胞を傷つける酸化がおき、体に様々なダメージを与え老化や病気を促進します。野菜の色は抗酸化成分を含み、7色の野菜は活性酸素を消去する力を持っています。
 抗酸化力の分析方法にDPPH法があります。ほうれん草を長年測定した結果、抗酸化力が季節によって変動し、特に旬の時期に力が強くなることがわかりました。パプリカや大葉、菜の花、ニンニクなども特に抗酸化力が強い野菜ということが分析から分かりました。
 ESR法は体内で発生すると言われている活性酸素種の消去活性を測る方法です。この方法で分析したダイコンの抗酸化力の違いを見ると白い青首大根に比べ、紅くるり大根は11倍の抗酸化力を持つことが分かりました。しかしその価値に見合った価格設定が行われていないのが実状です。生産者は野菜の価値を知り見合う価格設定をすること、消費者にもその価値を伝えられることが重要です。


講師資料より

色で野菜のチカラを分類

 植物が紫外線、有害物質、害虫などの外敵から自分を守るために作り出した物質を「フィトケミカル」といいます。それを私たちは栄養としていただいています。
 色で分類すると、赤・緑・紫・黒・白・黄・橙色になります。それぞれの色と野菜の機能性を紹介します。

①赤い野菜(トマト、スイカ、唐辛子、パプリカなど)はリコピン、カプサンチン、カロテンが含まれ、抗酸化作用や体脂肪を減らす働きがあります。

②緑の野菜(ブロッコリー、ほうれん草、オクラなど)はクロロフィル(葉緑素)を含み、ルテイン(黄色)は目のリスク低減、スルフォラファン(白色)の解毒作用があります。

③紫の野菜(なす、ぶどう、ブルーベリー、ビーツ、黒豆など)はアントシアニンが含まれ、強い抗酸化作用があり、目の疲れやピント調整に効果があります。

④黒の野菜(ごぼう、バナナ、茶、ゴマ、アマニなど)
はクロロゲン酸、カテキン、セサミン、リグナンが含まれます。体内の活性酸素を取り除き体の疲れをとります。

⑤白の野菜(大根、キャベツ、ネギ、玉ねぎ、豆など)はイソチオシアネート、大豆には女性ホルモンに変わるイソフラボンなどが含まれます。豆類を定期的に摂取することで、有益な腸内細菌を育てられます。

⑥黄の野菜(とうもろこし、レモン、タマネギ、ゴールドキウイなど)
はルテイン、ヘスペリジン、ケルセチンなどが含まれます。白内障のリスク軽減、血管を健康に保ちます。

⑦橙の野菜(ニンジン、かぼちゃ、とうもろこし、みかん)
はカロテン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチンなどが含まれます。活性酸素から身を守る働きや、骨芽細胞を育て骨の健康に役立ちます。


講師資料より

7色の野菜を食べる工夫

 野菜は7色で選び、おいしく、抗酸化力、免疫力、解毒力、酵素力の4つのチカラを得ることができます。そして野菜から食べる「ベジファースト」を心がけてください。一日につき7色の野菜350gと果物200gの摂取を推奨しますが、中身のある野菜なら量は少なめでも十分です。売り場では野菜の働きをPOP表示することを波及しています。様々な料理を工夫し7色の野菜を積極的に摂ってください。

土壌菌と腸内細菌

 野菜や海藻からも菌を摂取できます。野菜に付着した土壌菌は耐熱性菌も多く、加熱しても野菜に残ります。
 土と腸は同じ働きをしています。抗生物質を摂取すると腸内細菌が減少し、菌叢のバランスを崩すように、農薬や化学肥料の使用で土壌菌もバランスが崩れます。善玉菌、日和見菌、悪玉菌のバランスの良い土壌菌が付いている野菜を作り食べることで、私たちの腸内細菌のバランスも整い、病気になりにくい体になると考えます。


講師資料より

人の健康は地球の健康から

 人の健康は地球の健康に依存しており、土壌菌のバランスが良いと健康な農作物が育ち、それらを摂取することで食の健全性が得られ私たちも健康になれます。
 地球環境を良くすること、農薬や化学肥料の使用を減らし環境に優しい農業を推進することが、私たちの体の健康につながります。このプラネタリーヘルスにつながる農業の考え方を広めて行きたいと思います。

講演会の感想

・長年研究されていた方の講義で、説得力がありました。
・「栄養や効能から野菜の価値を決める」というのは、自身にとっては新しい視点でした。
・食の大切さを考えるいい機会になりました。日々の生活でなんとなく口に入れていたものが健康に直接かかわること、子どもにもきちんと教えるためにもきちんと勉強したいと思いました。

交流会等の感想

・生産者さんの生の声が聞けたこと、援農をしている方のお話など様々な意見、視点を聞けて良かったです。特に都市農業者の話はとても参考になりました。
・生産者と価格についての実情・意見交換ができました。
・東京の農業の紹介動画をみて、都市農業の良さがもっと広まればよいと感じました。


農業者と消費者とでにぎやかに交流
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