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イベントレポート

日  時:令和6(2024)年11月30日(土)13:30~15:30
会  場:クリエイトホール(八王子市生涯学習センター)視聴覚室
講 演 会:食の有効活用、おいしく無駄なく!野菜をいただく
講  師:谷口 亜樹子さん(東京農業大学農学部デザイン農学科教授)
出前寄席:はっきり言おう「いらないものはいりません!」
      いち・もく・さん
共  催:東京都消費者月間実行委員会、八王子市
参加人数:56人

 八王子市クリエイトホールで東京農業大学農学部教授の谷口さんを講師に、講演会「食の有効活用、おいしく無駄なく!野菜をいただく」を開催しました。食品ロス削減やエシカル消費の観点から、野菜を干して有効活用する利点や実践方法についてお話しいただきました。また、未利用資源を活用した食品開発の研究の一端も紹介いただきました。
 出前寄席もあわせて開催し、消費者被害防止のための漫才で楽しく学び、会場は盛り上がりました。


熱心にお話しされる講師の谷口さん

 以下、講演会の報告です。

「干し野菜」について考えよう

 冷蔵庫に中途半端に野菜が残ってしまうことはありませんか。余り野菜を活用して、おいしく無駄なくいただきましょう。野菜は干すと味が変わりおもしろいです。
 野菜の特徴は約90%が水分で、ビタミン、無機質、ミネラル、食物繊維をとることができます。アク成分や酵素、整腸作用、抗酸化作用や免疫を高めるなどの機能性効果に加え、彩りを高める効果、味や歯ざわりが良いなどの嗜好性もあります。
 野菜は収穫後も細胞は生きて呼吸をしていて栄養が減少します。そのまま冷蔵庫に入れておくと代謝で成分が消耗し、分解が起きて甘味や旨味が減りおいしくなくなります。しかし、野菜がおいしいうちに干すと代謝を抑えることでおいしさが保たれ、濃縮されて甘味や旨味が増します。また、水分が減少することで微生物が利用する細胞内の水が減って腐りにくくなるという利点もあります。
 野菜の栄養はミネラルやビタミンが多いですが、干すことでカリウム、リン、カルシウム、鉄などのミネラルは、凝縮されて量を多く摂取しなくても取れます。反対に、ビタミンCやビタミンAは干すと分解されて少し減ります。甘味成分の糖、旨味成分のアミノ酸や核酸などは濃縮されて甘味や旨味が増します。野菜を干すことで水分が減少し栄養が濃縮されるので、生の野菜より少量で栄養を摂取でき、カサが減るためたくさん食べられ、食物繊維は干しても損なわれず効率よく摂取できます。

干し野菜を作ってみよう

 作り方は簡単で野菜を生ごみのネットに入れてつるすだけ。また、ザルに置くだけでもできます。切り方で味は変わりますが、硬すぎないセミドライ(半ドライ)がおすすめです。


講師資料より

干し野菜に適したものと適さないもの

 干し野菜は基本的にはどの野菜でもできます。
 おすすめはセミドライが適しているトマトなどの果菜類や、大根、にんじんなどで旨味が増します。生だと癖のあるセロリの葉や古くなったキュウリやもやしも不思議なことに干すと甘くておいしくなり、旨味が増します。とりわけおすすめの冬野菜の大根は、干すとカリウム、カルシウムなどのミネラルが多くなり、かぼちゃ、レンコン、ゴボウなど炭水化物の多い野菜は、セミドライにして素揚げにするとおいしく乾燥後に硬くなりにくいです。さらにキノコ類は、干すとビタミンDが倍増して免疫力が上がり風邪予防にもなります。
 干し野菜に適さないものとして、ホウレンソウや小松菜など葉物は苦くなり、アスパラやネギなどの茎菜類は干すと繊維が硬くなりにおいも強いし、カリフラワーやナスなど白っぽいものは変色します。

干し野菜の栄養価や日持ちの良い干し方

 生の野菜はゆでるとミネラルが溶け出しますが、干すことで栄養の損失は少なくて済みます。
 半ドライは生に比べて長持ちし、干す時間が短くビタミンCは損なわれにくいです。水分を戻しやすいので料理に使いやすく、硬くないので生食できる野菜はそのまま食べてもおいしいです。
 味が濃縮されてミネラルなどの栄養価は高くなり、色は濃く鮮やかに見た目がよくなる野菜もあります。また、料理に油を使うことでβ-カロテンなどの脂溶性ビタミンの吸収がよくなるため、野菜炒めや揚げ物にも適しています。中でも素揚げはとてもおいしいです。

干し野菜の保存方法

 干し野菜は密閉すると冷凍で約1か月、冷蔵では半ドライで5日位保存できます。ただし、冷蔵庫に入れるとにおいが付きやすく忘れがちなので、作ってすぐ食べるのがおすすめです。
 一番大事なことは、楽しみながら干し野菜を作って、野菜をおいしく食べること。野菜がたくさん手に入ったときは、ぜひ干し野菜を楽しんでみてください。


講師資料より

未利用資源を活用した食品開発

 食の有効活用の観点から、食品ロス(廃棄)の削減とともに、現在食材として利用されていない資源を活用し食品化する研究にも取り組んでいます。その一部を紹介します。

摘果(間引き)した柿…
 小さく青いが、発酵させるとオレンジ色になりきれいなコンポートができます。

おから…
 保水性があって揚げ物にもよく合い、スポンジ生地に混ぜるとふっくらしっとり仕上がります。

ブナサケ…
 シロサケが産卵期に体の色が変化したものをブナサケといい、脂質含有量が低下しおいしくなくなるが、たんぱく質が含まれ魚醤油にするとおいしい調味料になり、廃棄されるパンの耳などを加えてなめ味噌風調味料もできます。

ホエイ(チーズ製造時に出る水分)…
 まんじゅうの皮に使うと見た目もよくおいしくなります。

カイコのさなぎ…
 化粧品や医薬品に利用した繭を取った後、無菌カイコでみそや塩麹を作ります。

メヒカリ…
 日本近海の15㎝位の深海魚で脂が多く、未利用部位の頭部や内臓で魚醤油を作ります。

アカモク…
 日本固有の海藻(ホンダワラ)で10m程度に成長し老成すると赤褐色になります。ゆでるとネバネバ、シャキシャキした食感が人気で機能性があり、さつま揚げを商品開発しました。

海藻類…
 小麦粉製品と混ぜるとモチモチする食感が出ます。ブルーカーボン(海中、海面付近にある生態系によって吸収・貯留された炭素)にも貢献でき、海藻類の養殖活動は研究されています。

ホヤ殻の堆肥…
 鮮度の良いホヤの身は東北地方の一部で珍重されますが、あまり利用されていません。殻を堆肥化したところ、野菜はおいしく大きく育つものもあり研究が期待されます。
 他にも規格外のシソの葉、リンゴの果皮、雑穀などの未利用部分の可食化なども研究されています。

まとめ

 これからの時代は資源の有効活用は重要な課題であり、注目もされています。低利用資源や未利用資源、機能性の研究を行い有効活用することが、ヒトが健康で持続可能な社会に貢献できると考えます。

出前寄席 13:30~13:55
「はっきり言おう!「いらないものはいりません!」
出演:いち・もく・さん

 講演会に先立ち、東京都の出前寄席を開催しました。新手の手口の紹介も交えた消費者被害を防ぐ方法を楽しく学べる漫才で、参加者は声を上げ大いに盛り上がりました。


「いらないものはいりません!」声を合わせる参加者

フードドライブを実施

 開催前にフードドライブを実施しました。調味料や菓子など食品99個26.6㎏が集まり、フードバンク八王子に寄付しました。ご協力ありがとうございました。

参加者アンケートより

・食品ロスを防ぐためにピクルス・干し野菜にする等工夫をすることで、生かしきることができると知り、実践してみたいと思います。
・食の有効活用(ロス削減にもつながる)、未利用資源の活用等、今後更に悪化する地球温暖化に伴う食料不足対策の参考となった。
・とても興味がそそられました。面白かったです。(思っていたよりマニアックな内容でなかなか聞く機会がない内容でした。)
・具体的な詐欺の事例を漫才でやっていただいて、楽しく学べました。

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