「エシカル消費」オンライン講演会では、エシカルとは?エシカル消費とは?について、日本サステナブル・ラベル協会 代表理事の山口真奈美さんを講師に迎え「エシカルな暮らし あなたの選択がサステナブルな未来をつくる」と題してお話しいただきました。
![]() 講師の山口 真奈美さん |
以下は、講演の概要です。
私たちの生活は地球の多くの資源や人々の恩恵にあやかって成り立っています。朝起きてから寝るまでの間に様々な製品・サービスにお世話になっています。その製品の原材料がどこの国のどの地域、どういう環境から調達され、どのように加工・流通されてお店に並べられ、私たちの手元に届くのかという「ストーリー」があります。「ストーリー」の中に、地球環境や人権侵害など社会的な課題がないかは非常に見えづらいです。
たとえば、アブラヤシの実を絞ったパーム油が生産されているインドネシア、マレーシアでは環境問題や社会問題がおきています。水産資源は気候変動の影響で減少の一途をたどり、森では森林資源の伐採などで豊かな生物の多様性が喪失してしまう状況になっています。地球環境の変化に目を向けるとこの数十年間に気候変動があり、生物の絶滅危惧種が多くなりました。人間が地球環境や生態系に及ぼす影響はたくさんあります。直接的な要因には資源の利用、土地と海洋の利用があります。間接的な要因としては、人口、経済、技術、制度とガバナンス、紛争と伝染病などがあげられます。地球環境を大切にしながら暮らしたいと思っても、何気ない暮らしの中で環境や社会的なリスクに加担しているかもしれません。人間社会は「地球の限界(プラネタリーバウンダリー)」において、環境に大きなダメージを与えてきました。
国連では「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を発表しています。SDGs17の目標と160のターゲットです。
5年後10年後も自分も社会も持続可能であるためにどのような生活をしたらよいのでしょうか。
目標12番:「つくる責任 つかう責任」“持続可能な消費と生産のパターンを確保する”とあります。持続可能な消費やライフスタイルを通じて、私たちが一緒に社会変革を起こすことができることもあります。
私たちは朝起きてから寝るまでの間に様々な製品・サービスの恩恵を受けています。どんな朝食をとったか、手や顔を洗う時に使う洗剤やタオル、着ていく洋服など様々なアイテムを使っています。これはサステナブルなのか?エシカルなのか?わかりづらいです。私たちを支える製品やサービスはどこからどこへ行くのでしょう。
「エシカル」とは倫理的とか道徳上という英語(形容詞)をカタカナにして読んだ言葉です。
人、環境、社会、地域、動物福祉など、これらに配慮した行動や考え方を「エシカル」、そういった配慮がなされた製品やサービスを選んで消費することを「エシカル消費」と呼んでいます。
なるべくエシカルなものを選択してエシカル消費を実践して、持続可能(以下「サステナブル」という)なライフスタイルを当たり前に送れる社会に繋げていくことが大切です。
普段私たちが使う製品は企業が作っています。製品を製造するときに環境や社会にリスクがあったら、それはサステナブルなのか、エシカルなのかという疑問が生じます。企業が製造や販売しないほうがよい製品、積極的に製造や販売したほうがよい、持続可能な社会につながる製品なのかはどう判断したらよいのでしょう。企業もどのようなものを提供したらよりみんなが豊かになっていくのかを考え、そして消費者もなるべく頑張ってサステナブルな行動を起こしている企業を応援することが重要になります。
エシカル消費には、以下のような配慮が必要です。
(1)人への配慮
・劣悪な環境で働かされていないか
・子どもたちが学校にも行けず働かされていないか
・十分な賃金が支払われているか
など、社会的な配慮と人への配慮は非常に密接です
(2)社会への配慮
・適正な賃金を払い、社会問題を起こしていない商品
・フェアトレードなど様々な人や環境や社会に配慮された製品か
・寄付付きの製品や障害者の方々が作った製品を買う
・ユニバーサル、インクルーシブな社会
・社会的責任のある投資や金融のあり方を見直す
(3)環境への配慮
・自然や環境、生態系にも配慮した製品
・リサイクルやリメイク、アップサイクルされたもの
・国産材利用、車や洋服などのシェアサービス
・資源保護、生物多様性に関連する認証製品(FSCR認証、MSC・ASC認証など)
(4)地域への配慮
地産地消、応援商品(被災地の商品購入)、伝統工芸、地域の雇用促進、地元の商店街で買う
(5)動物福祉
・エコな代替素材への転換(毛皮やレザーの代わりにサステナブルファッション)
・畜産での命の扱い(平飼い卵など)
・保護ペットの里親になる
・動物の命の配慮
![]() 講師資料より |
エシカル消費を「衣食住」で見てみましょう。
(1)繊維製品のつながり
私たちが普段使うタオルや洋服。綿花であれば綿花栽培地があり、生産者がいて、糸になって製品化され、製品として店頭に並び消費者は購入して使うことができます。
綿花栽培地では有機(オーガニック)で環境に配慮し育てる土地がある一方、過剰に農薬や化学肥料を使い土地や土壌にダメージを与えて、健康被害や生物多様性への影響が出ている場合もあります。
児童労働の結果、子どもたちが学校に通うことなく、ずっと炎天下の中で働くことで、大きくなっても注意書きが読めない、計算ができないなど様々な問題が出ています。
加工・流通過程でも、バングラデシュで起きた2013年ラナ・プラザ崩壊事故では、多くの労働者が犠牲となり、低賃金、長時間労働なども浮き彫りにされました。
どこでどのように製品を作っているか、どのような「ストーリー」があるか、知ることが大切です。
![]() 講師資料より |
(2)食とのつながり
水産資源では、漁獲量の減少や過剰な漁獲状況が問題です。日本の食料も自給率は低く、海外からの輸入にはCO₂排出が増加するという課題があります。動物福祉(アニマルウェルフェア)は日本ではまだ浸透していません。
世界では食べられる食料が毎日10億食分廃棄される一方、何億もの人々が飢餓に直面しています。くらしの中で食を大切にし、いただく食材を考え、無駄にしないことは大切です。有機JASマーク(オーガニック)のものを積極的に選ぶ、食品ロス回避のためコンポストの活用など、私たちの暮らしでできることをしましょう。
![]() 講師資料より |
(3)住とのつながり
住の中の日用品では、木材製品のいすやテーブルの他に、ティッシュや紙製品のノートも木質由来です。日本は森林大国ですが、実は多くの木材を輸入しています。アラスカの温帯雨林では森林破壊によって森林資源が減少しています。森林破壊は動植物の絶滅やCO₂の吸収源減少を起こし、気候危機への影響が多々あります。また、インドネシア、マレーシアでは森林伐採した土地にアブラヤシの木を植えてパーム油を取ります。パーム油は化粧品、食品、洗剤石鹸の原料に使われ、日本だけでなく、世界中の消費国が依存しています。
FSC®という認証マークがあります。適切に管理された森林で伐採された木を使っているという認証制度です。審査員がチェックしていますので、参考にしてください。
使った製品をどのように手放すかも課題です。どのように循環させていくか、リユースやリサイクル、手直しして再利用したり、新しいものに変えたりすることはエシカルなアクションにつながります。
衣食住の中で、環境・社会・経済への配慮は共通項です。環境だけ大切にして生産者が経済的に立ち行かなくなっては困ります。人間の営みと生態系の調和、地域社会を含めて環境・社会・経済のバランスは大切です。
エシカル消費と言っても、何を根拠にエシカルか、サステナブルなのか、わかりづらい社会です。食の安全、環境、生物多様性、人権、いろいろな視点がありますが、選択する手段として、認証制度やラベルがあります。
有機JAS、森林のFSC®、MSC「海のエコラベル」、養殖のASC、カエルのマークで知られるレインフォレスト・アライアンス、国際フェアトレード認証ラベル、オーガニック繊維のGOTSなどさまざまなラベルを探してみてください。
原材料の調達から廃棄だけでなく、循環型社会に向けて私たちがどのように取り組んでいくのか、エシカルな視点で作られたものを選ぶ、人権侵害や環境、社会に配慮していないものは選ばない、責任ある調達を果たす企業を応援することも重要です。
一人一人心の中にある大切にしたいものを選ぶ、愛のある選択が非常に大きな役割を担っています。ぜひみんなでサステナブルな未来を創っていきましょう。
![]() 講師資料より |
・山口さんのご説明がとても上手で分かりやすかったです!大変勉強になりました。
・衣食住に分けて話されたので、整理されてわかりやすかった。全般的な話だったので、具体例も聞きたかった。
・物には「ストーリー」があるということ、製品として手元に届くまでを考えることが、エシカル消費につながることがよくわかりました。とても分かりやすいお話でした。