くらしフェスタ東京2023

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メインシンポジウム

イベントレポート

【講演会】
日  時:令和5年10月6日(金)14:00~16:00
会  場:東京ウィメンズプラザホール
講  師:有賀 敦紀さん(中央大学文学部心理学専攻 教授)
参加人数:103名

【録画配信】
配信期間:令和5年11月20日(月)10:00~
          12月4日(月)17:00
視聴回数:前半270回 / 後半196回

主 催:東京都消費者月間実行委員会
【講演会】
日  時:令和5年10月6日(金)14:00~16:00
会  場:東京ウィメンズプラザホール
講  師:有賀 敦紀さん(中央大学文学部心理学専攻 教授)
参加人数:103名

【録画配信】
配信期間:令和5年11月20日(月)10:00~12月4日(月)17:00
視聴回数:前半270回 / 後半196回

主 催:東京都消費者月間実行委員会

 令和2年度~4年度は、オンラインで開催したメインシンポジウムですが、本年度は4年ぶりに東京ウィメンズプラザホールで開催いたしました。
 講師には、消費者の認知過程に関する研究において、国際的に高い評価を得ており、今後の更なる活躍が期待されている、若手心理学者である有賀敦紀さんをお迎えしました。
 消費者の商品選択や魅力評価、意思決定などに注目し、消費者の行動を制限する様々な要因とは?普段何気なく行っている購買行動の意識的側面と無意識的側面について消費者行動の背景にある心理プロセスを紹介して頂きました。
 デモンストレーションテストがあり、会場の皆さんが手を挙げて参加、会場全体が盛り上がる場面もありました。最後の質疑応答も活発で、あっという間に講演時間が経過しました。

 以下は講演の概要です。


録画配信の画面

認知心理学とは

 私の専門は「認知心理学」です。我々の脳の中で、どのように外の世界が認識されているかということ、主に記憶とか感情について調べています。カウンセリングなどを行う「臨床心理学」ではなく、人間一般にどのような認知の傾向があるかを見ています。それを使って、消費者の行動を分析できないかと最近は考えており、マーケティングや広告の魅力形成などについても研究をしています。

デモンストレーションテスト

 皆さん、これは何に見えますか?多くの方は平仮名の「ぷ」に見えると思います。これをアメリカ人に見せたところ、「ボーリングをしている人」という答えが返ってきました。同じ刺激であっても違った解釈が成立するという例です。これは商品にも言えて、同じ商品を見たとしてもそれが魅力的に見える人もいれば、見えない人もいるわけです。
 認知心理学は視覚から入る刺激、聴覚から入る刺激、それが脳で処理されて反応が起こるというプロセスを想定しています。同じ刺激であっても、認知プロセスによって異なる反応が生まれます。これは、同じ商品であっても、買ったり買わなかったりする、それが頭の中の認識で決まるということを意味しています。


会場の様子

「買う」が選ばれるとき

 消費者は何に魅力を感じて所有したいと思うのか。何に対してお金を払ってもいいと思うのか。
 そもそも「買う」ことにどのような意義があるのか?色々な現象・問題から見ていきます。


(1)ウォーター・ダイアモンド・パラドクス
 アダム・スミスが言及した問題です。生命の維持にとってはダイアモンドより水のほうが大切なのに、ダイアモンドのほうが値段が高い。ものの価値は実用性だけでなくて、供給に依存するというものです。


(2)希少性の原理
 対象が希少であるというだけで、人間はその対象に価値を見出すという原理です。商品のメニューに“本日限定”と記載したときの方が、“今年限定”と記載したときよりも売上げが伸びたという例があります。限定されればされるほど、人々はそれに魅力を感じます。


(3)選択のオーバーロード現象
 消費者は選択肢が多い方に興味を示すが、実際に購入し、さらに満足度が高まるのは、選択肢があまり多くない方です。選択肢が多すぎると、選択にかかる労力が多くなるため、逆に嫌われます。また、選択肢が多いと、選ばれなかったものはどの程度なのか、という不安が常に付きまといます。
 我々の脳の処理能力を超えてしまったときに起きやすい現象です。


(4)松竹梅効果
 「真ん中は選ばれやすい」という傾向を使って、選択肢を操作するという方法です。メニューで高い方から「S・A・B」とあった場合に、一般的には真ん中のAの選択率が高くなります。Aより高いSが選択肢に入ることによって、真ん中が選ばれやすくなります。


(5)Less-is-better現象
 アイスクリーム屋さんで、カップに対する相対量で、いくらなら払ってもよいか、という感覚が変わります。視覚的文脈が商品の価値判断に影響を与える現象です。1つの商品でも見せ方次第でお客様に魅力的に思わせるという例です。


有賀先生の資料より

(6)アンカリング効果
 カーネマン(行動経済学者)が提唱した効果です。最初に質問する内容によって、その後の回答が歪むというものです。アンカーというのは船の碇です。最初に答えた数字によって、その数字の付近(碇がおりた場所)でしか人々は物事を考えなくなるという理論です。例えば、あえて予算よりも高めのものを最初に見せておいて、予算内の安いものを紹介すると、「お安い」というように思わせることができます。


(7)サンクコスト効果
 一回お金を払ったものに対して、我々が執着してしまうというものです。映画館に入ってつまらない映画であることが分かったのに、見続けてしまう。購入したお菓子がまずいことが分かっても食べ続けてしまう、という経験がありませんか?
 取り戻すことのできない、既に投資したコストがその後の意思決定に影響を与えるというのが「サンクコスト」です。我々は何か投資すると、元を取ろうして固執してしまいます。
 消費者問題でもこのような例があります。契約において、自分に不利な契約だと分かっていても、お金を取り戻すために契約のいい部分に注意を向けて、どんどん騙されてしまう、ということが起きます。

「買わない」が選ばれるとき

 前半では我々消費者がどういう時に商品に対して魅力を感じて買おうという行動を取るのかについてお話しました。では、積極的に買わないというのは、どういう時に起きるのでしょうか?
我々の心には無意識というものがあります。
 この「買わない」を調べるときに、意識と無意識の2つの態度に注目しました。それは、私が個人的に福島県の問題に関心があり、事実はどうなのか、調べてみたいと思ったからです。
 農林水産省の調査結果や、三浦ら(大阪大学三浦麻子教授の研究グループ)研究でも、福島県産に対する消費者の態度はネガティブではない、というような調査結果が出ています。
 そこで、人間の無意識的態度に注目すれば、このパラドクスは解消できるのではと考え、「潜在連合テスト」を実施してみました。このテストは、あるカテゴリと属性(例えば、良いイメージvs悪いイメージ)の無意識的結びつきを実験的に調べるために開発されたものです。
 良いイメージの連合であれば、右手を挙げる。悪いイメージの連合であれば、左手を挙げる。という具合に、実際に体験してみましょう。


会場も参加して、テストを行いました

 「潜在連合テスト」の結果、「福島県産」とネガティブなイメージの無意識的連合は、東京において比較的強いことが分かりました。意識的には福島県産を買いたいという反応を示しても、無意識的にはあまりポジティブな印象は持っていないということですね。もちろん、福島県産のものが売れるようになって欲しい、みんなが買うようになって欲しいと思っていますが、その方向に持っていくために、こういった態度を修正するという方法が必要なんだろうなと思います。エビデンス(証拠、根拠)が得られ、時期が来たら、機会があれば披露したいと思います。

「買う」と「買わない」の境目を楽しむ

 最後に『「買う」と「買わない」の境目を楽しむ』というお話をします。


(1)損失回避傾向
 我々は損失を過大評価して回避する傾向にあります。1万円で買い物をしたとき、1万円とおなじものが返ってきても、人間は納得しません。
 それ以上のものを手に入れないと納得できないのです。


(2)保有効果
 例えば、マグカップをプレゼントされた人が、売る場合には高い値段を付けます。一方、プレゼントされていない人は、買う場合には安い値段を付けます。人間には一度保有したものを手放したくないという心理があります。


(3)コントロールの錯覚
 被験者に宝くじを購入させます。1つは自分で選んで購入する、もう1つは販売員が選んだ宝くじを購入します。ここで、「他所で足りなくなったので、買い戻したい、いくらだったら売ってくれるか?」と聞いた場合、自分で選んだ場合のほうが高い価値をつけます。人間は自分で選んだものの価値を高く評価するのです。


 こういった講演ですと、どうしても詐欺に騙されないようにしましょうとか、買い物が怖いものかのような話になりがちですが、本来買い物とは面白いものです。そもそも「好きなものを買う」ということは自己表現でもあるわけです。


 今の時代「買う」けど「持たない」という選択肢もあります。今までの所有を前提とした「ソリッド消費」と呼ばれる従来のスタイルでなく、「リキッド消費」と言われる所有しない消費スタイルです。今はやりのサブスクリプション(月額課金、定額制のサービス契約)やシェアリングなどがそれに当たります。「買う」か「買わない」かというのも自分の表現ですし、「持つ」か「持たない」かというのも自己表現です。


 消費者行動の背景にある心理プロセスを理解することで、安心して買い物ができますし、消費者被害の予防につながります。また、安心して買い物をすることで、買い物そのものを楽しむことができます。買い物を通して、「この人はこういうものが好きなんだ」と分かり、他者という多様性を理解することもできます。
 皆さん、ぜひ、買い物を楽しんでくださいというのが私からのメッセージです。


身を乗り出して語る有賀先生

参加者アンケートより

・今まで聞いたことのないテーマなので、どのような内容か興味津々でした。無意識な面も含めて心理プロセスを理解した上で、もっと買い物を楽しめたらいいと思いました。
・心理学と経済学の関連面白かったです。特に松竹梅効果、アンカリング効果、サンクコスト効果にやられ続けています。なかなか合理的な判断ができず、妙な損得にこだわっていると実感しました。
・とても身近な例を沢山提示いただき、話の中身深くまで引き込まれて行って大変時間が短く感じました。
・福島県産イベントがあったら、行ってみようと思います。
・認知心理学のお話興味深く聞きました。消費者の心をつかむ色々な事が考えられているのを知りました。コロナの三年間はZoomとかも利用しましたが、講演に直接参加できるのはやはり格別です。
・自分が知らず知らずのうちに買い物の選択に影響を受けていた心理的操作を知ることができ、冷静に買い物ができるようになりそうです。

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