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「東京を知ろう! ~エコツーリズムでつなぐ自然と文化~」

配信期間:令和5(2023)年1月16日(月)10:00~
      令和5(2023)年2月15日(水)17:00
講  師:海津 ゆりえさん
      (文教大学国際学部国際観光学科 教授)
主  催:東京都消費者月間実行委員会
視聴回数:第1部 147回
      第2部 121回
      第3部 118回

 文教大学国際学部国際観光学科教授の海津ゆりえさんを講師に迎え、オンライン講演会「東京を知ろう!~エコツーリズムでつなぐ自然と文化~」を録画・公開配信にて開催しました。
 以下は講演の概要です。

講師の海津ゆりえさん
講師の海津ゆりえさん

第1部:東京都―この豊かな自然・文化・歴史に感謝!

◇東京の自然と文化

 都会のイメージが大きい東京都ですが、非常に豊かな自然と、自然とつながりの深い文化・歴史を持つ都市です。東京都は2017mの雲取山から標高0mの臨海部まで2000mの標高差がある自治体で、また、山々から支流が一級河川である多摩川や荒川に集まり東京湾に注ぎ込む水が豊かな土地です。東京都の36%が自然公園に指定されており、都道府県の中で自然公園エリアの面積比は滋賀県に次いで2番目です。山地・丘陵・台地・低地という多様な連続した豊かな自然環境があり、それぞれの場所ごとの変化に富んだ景観と生物の多様性がみられます。林業景観・山上の集落など、自然と人との営みから生まれてきた二次的な自然環境があり、地域文化とのつながりを風景や景観が物語っています。


◇エコツーリズムとは

 世界的にみると、第2次世界大戦後、自然は豊かだけれども経済や産業も発展していないという所に先進国から人々が押し寄せました。自然を破壊し環境を顧みることなく経済を追い求めることもあったため、観光をコントロールしなければいけないという課題に直面しました。そこで1980年代から90年代に各大陸で自然に配慮したエコツーリズムに取組む運動が広がっていきました。日本では、1990年前後に現在の西表石垣国立公園地域で、島の人たちと一緒に自然や文化を守りながら観光をする仕組みを進めていこうという取組みがスタートしました。日本の場合は課題解決というより資源を活用しながら地域の収益に還元する方策としてエコツーリズムが普及しました。
 エコツーリズムの概念を形にすると「資源の保全」「観光振興」「地域振興」を同じ長さの辺に置く正三角形になります。バランスをとってエコツーリズムを進めるということです。地域の自然・文化や人々を守って活用し、地域に還元・貢献する観光と言えます。エコツアーとは、エコツーリズムの概念を実践する旅で、多くはガイドが案内します。また、よきツーリストを育てるという使命も持っています。
 東京都では多くのエコツアーが行われ、東京都はエコツーリズムの先進地と言えます。区域を指定し利用ルールを設定する東京都版エコツーリズムが小笠原などで動いており、また、都独自のレンジャー制度を導入しています。
 東京には豊かな自然や生活文化、歴史があるということをまず知っていただきたいです。エコツアーに参加することが自然を守りながら観光し勉強する機会になります。そして、資格を取ったガイドが誘ってくれる自然の世界を楽しんでもらいたい。

講師資料より
講師資料より

第2部:里山の自然・生活文化を継承する―多摩地域

◇「観光」とエコツーリズム

 「観光」とはもともとは中国の易経という占いの本から取った言葉です。どんどん人を招いて豊かになろうということではなくて、その国が光り輝くことによって、訪れた人に満足してもらい持続的発展をするという素敵な意味を持っています。エコツーリズムというのはこの「観光」そのものだと私は考えています。


◇自然や文化をつなぐエコツアー

 地域の宝が体験に置き換わり、次につながっていくのがエコツアーです。地域の宝とは、地域にとってかけがえのないもの、日常の延長にある地域資源、それが地域の個性や地域のブランドになっているものです。エコツアーでは地域の宝をもとにしたメッセージや事実、課題がガイドや案内を通して伝えられ、訪れた人はガイドとの出会いや、地域のお店に行った時に特産品の説明を受けることで伝えられるという体験をします。それが記憶に残ってその後ファンになる、継承する、あるいは貢献をするという形で訪れた人たちの中で消化されていきます。

講師資料より
講師資料より

◇里山のエコツアー

 自然や生活文化を継承するということを続けている方々が多くおられる里山、具体的には多摩地域のエコツアーをいくつか紹介します。

・自然を丸ごと楽しむツアー…夏には川に飛びこんで遊ぶツアーがあります。人里に近い場所にタヌキやコウモリ、蛍など山の動物を見ることができる豊かな自然があります。
・文化財として地域で保存されている古民家で紙すきなど体験できるツアー…里山が豊かであったことがしのばれます。
・お祭りや伝統芸能を取り入れたツアー…地域で役割分担をしながらお祭りが営まれています。忘れられない体験になるでしょう。
・里山の水田をサイクリングで巡るツアー…海外から来た方にとって、日本の水田は大きな観光資源になっています。


 また、地域の人が作ってきた生活文化の中には色々な特産品があります。工夫を凝らして商品化し、地域のブランドとなっています。このようなものに触れ合い味わうことができる、これもエコツアーの醍醐味の一つです。


 エコツアーを通じた文化の継承者や関係人口になるとまではいかなくても、多様な切り口で地域とのつながりを持つことができます。例えば地域で採れた農産物を買う消費者となり、購買を通してその地域と関わっていくなどです。

檜原村の特産品(講師資料より)
檜原村の特産品(講師資料より)

 里山のエコツアーというのは、日常の延長にあるその土地の日常、私たちにとっては「異日常」を体験するということです。私たちは楽しみながら、地域の宝を享受し、学び、一時的な継承者になる、そんな旅が実現できると思います。
 近い所ですので 1日、半日という単位でも訪れることができると思いますし、あえて近いけれども泊まってより深く知ることもできると思います。多摩地域のエコツアー、参加してみてはいかがでしょうか。


第3部:エコツーリズムの教科書―東京の島々

◇エコツーリズムの教科書~小笠原の事業

 小笠原諸島は、東京都区部から南方1000kmにある30余の島々で、現在の住民居住島は父島・母島です。エコツーリズムとしては1988年に今も続いているホエールウォッチングの第1号が小笠原で行われたことが始まりになっています。2016年には世界自然遺産にも登録されました。
 小笠原のホエールウォッチング事業は、1989年から、守りながら使っていくための仕組みを成立させ進められています。クジラを守るためのルールをつくる、クジラの資源管理をする、毎年回遊してくるクジラの個体調査をする、ガイドの養成、地元の遊漁船の人たちをガイドのウォッチングボートとして雇用をするなどです。ホエールウォッチング協会が運営をし、保全と利用のバランスがとれたビジネスとして定着しています。素晴らしいと思います。その後日本ではいろんな所でホエールウォッチングを始めましたが、こちらの事業を手本にしています。また、小笠原では色々な動植物を対象にエコツアーが行われており、陸域でも東京都と小笠原村で一緒につくった東京都の島しょ地域における自然の保護と適正な利用に関するルールが適用されています。
 小笠原では、島の近くにクジラがやって来ます。クジラの種類はザトウクジラで、子どもをどこかで産み、子連れでやってくるので、小さいクジラが脇にいるクジラを見ることができます。島から帰る時には、普段はダイビングボートだったりする小型船が大きい母船について見送ってくれて、「見送り船」と呼ばれています。これが小笠原の一つの風物詩になっていて、「あぁまた行きたい。」と旅情を掻き立ててくれます。

小笠原の海(講師資料より)
小笠原の海(講師資料より)

◇自然を楽しむ八丈島のエコツアー

 伊豆諸島の八丈島は、太平洋のど真ん中にある火山島で、東京・羽田空港から飛行機で50分という近い場所にあり、クジラが回遊し、ウミガメが多く訪れるところです。フィリピン海の魚が来るので大物釣りのフィールドになっています。八丈島の特徴は何と言っても火山で、西に八丈富士、東に三原山があります。昔から漂着者や漂流者が来ていたことでミックスカルチャーな環境があり、固有の食文化や風俗などが生まれ、継承されてきました。
 底土海水浴場では、好奇心が強いのかウミガメがすぐそばまで来ます。三原山東側の山の中にあるポットホールは一つ一つ穴になっていて、ここに滝のように水が段々になって流れています。八丈島は水が豊かなのも特徴です。森に覆われている三原山には、滝がたくさんあり、岩石が削れて山ひだが深く入り込んでいる所があります。森の中では、「どこにいるのだろう」と思うような神秘的な風景に出会うことができます。三原山では清々しい空の下で山を登りながら、八丈富士と海の向こうに八丈小島が見える、素晴らしい景色を楽しめます。
 小笠原諸島も伊豆諸島もダイナミックな自然があり、五感を生かして自然を楽しむことができるのが島しょのエコツアーです。里山では「異日常」という話をしました。島ではぜひ、地球を感じる「非日常」の旅を楽しんでいただきたい。ツーリストは楽しみながら、地球の未来を考える担い手になれるだろうと思います。


エコツアーを!東京の旅を!

 3回シリーズで東京都をフィールドに皆さんと小さな旅をしてまいりました。旅を通して地球と地球の未来の創造に関わる消費者になること、私はこれがエコツーリズムの大事な意味だと考えます。多摩地域や島しょ部では、その土地にある自然を活用し傷めつけることなく持続的に生活をしていく術や発達した知恵がありました。今はSDGsの時代ですが、持続可能な未来に向けて私たちはどうしたら良いのか、現場で学ぶことができると思います。そして賢い消費者、エコツーリストになっていただきたいです。
 エコツアーを、東京の旅を、楽しみましょう。


視聴者アンケートより

・東京都はすばらしい。里山や島の自然など、東京の魅力を知ることができました。
・エコツーリズムという言葉や観光の語源を、初めて理解できました。消費者として、地球や環境を活用して守っていくということ、それは矛盾していないことに気づきました。写真もきれいで、海津さんのお話も分かり易く字幕も有効でした。
・エコツーリズムをすることがSDGsやエシカルにもつながると思うと、よりうれしい気持ちになりました。


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