もっと広げようコミュニケーションの輪 10月は東京都消費者月間です。 未来につなげる消費行動 東京都と消費者団体が協働し、10月を中心に消費者問題に関する様々な事業を行います。
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くらしフェスタ東京2013【メインシンポジウム】

講演会:未来につなげる消費行動 ―哲学者 萱野 稔人さんに聞く―

場所:新宿明治安田生命ホール
日時:10月16日(水)

当日スケジュール

13:30 委員長開会あいさつ
笹浪真智子(多摩のくらしを考えるコンシューマーズ・ネットワーク)
13:35 講演
萱野稔人氏(哲学者・津田塾大学国際関係学科教授)
15:15 ミニコンサート  カメリア・トリオ
16:00 閉会
司 会 木村美幸(東京都消費者月間実行委員会副委員長 消費生活「ポレポレ」)

講演

「未来につなげる消費行動 -哲学者 萱野稔人さんに聞く-」

はじめに

今日は台風が来て朝起きて外を見たらすごい風で、「誰もいらっしゃらないのでは」と思いましたが、天気の悪い中足をお運びいただき、ありがとうございます。
さて、私は哲学者と言われていますが、この肩書きを名乗るのも勇気がいります。
今日のテーマは消費行動です。哲学者らしいことを言わなければなりませんが、私は一般消費者と変わらない生活を送っているので、今日は何を言えるかずっと考えてきました。

消費行動とは何か

「消費行動とは何か」ということですが、「○○とは何か」と言うと哲学っぽくないですか。とりあえず「○○とは何か」と問えば、哲学っぽい雰囲気を醸し出せます。といってもそんな難しい話をするつもりはなく、哲学をする時にいつも自分に言い聞かせていることですが、物事の本質はできるだけシンプルに、明快にわかりやすく伝えることをモットーにしています。
本題の「消費とは何か」という問題ですが、「消費=お金を使うこと」であり、「未来につなげる消費行動」とは、「どういうお金の使い方をすれば未来につながるのか」ということだと思います。
お金をどう使うのか、そこからお金ってそもそも何なのかということに話を進めて行きます。

消費と投資

PHOTOお金を使うということについては、「消費と投資」の2種類あります。100万円あったら、ローンに充当したり、物を買ったりできます。一方、金融商品を買ったり、事業を起こして設備投資をする、それによってさらに利益を目指すということもできます。
では、「消費と投資」はいったいどこが違うのか。 「消費」は買った瞬間、サービスを受けた瞬間に終わりますが、「投資」は事業のために色々買ったりしますが、それがさらに次の経済活動につながって行くのです。一般的に言えば、買って終わりなのが「消費」、買ってお金を増やしたり、お金のリターンを目指したりするのが「投資」です。私としては、消費と投資は本質的にはそれほど違わないのではないかと考えます。

消費を通じて社会をデザインする

私は最近ロードバイクを注文しました。私は1970年生まれですが、子どものころは自転車は欲しいが、中々買ってもらえなかった時代でしたので、自転車には思い入れがあります。
自転車は、本体を軽くするために、フレーム(車体部)はカーボン素材で出来ています。この素材は鉄よりもかなり軽く、丈夫です。先日、メルセデスベンツがカーボン素材で車体を使った車を発表しましたが、大変燃費が良いのです。トヨタが長年かけてプリウスで達成した燃費を簡単に超えてしまいました。カーボン素材はそれだけ未来の素材であると言えます。
カーボン素材の世界最先端のメーカーは東レです。自転車の世界では欧州が最先端ですが、イタリアの一流メーカー製の自転車でもフレーム素材はほとんど東レです。また、コンポーネント(部品)は、日本のシマノがほぼ世界市場を独占している状況です。どのメーカーの物を買おうとも実は部品はほとんど日本製なのです。例えば、ブリヂストンの自転車は、フレームは台湾企業が下請製造していますが、その素材を提供しているのは東レです。
つまり、私が自転車代金として払ったお金は、ブリヂストン⇒台湾下請企業⇒東レやシマノ、と回っていくわけです。日本メーカーを応援したいと思って日本の物を買う、そのお金がメーカーに行き、従業員の賃金になる、という風に、消費をするということは、買った物を通じてお金の流れを作ることであり、沢山お金が流れれば、それが設備投資に使われます。
電力も選択制になった場合には、私達が「風力発電で電力を買おう」となると、そこで設備投資にお金が使われて、だんだん世の中が風力発電になっていくということが起こり得ます。 物を買うということは、社会のあり方を変えていく第一歩になり、社会をデザインできるということです。

お金は無くなるものではない

「金は天下の回り物」ということを考えると面白いな、と思うことがあります。
昔は公共事業、最近は社会福祉、高齢者に税金が出ていくと言われます。
少子高齢化で若者の負担が増えて、高齢者を支えられない、ということがよく議論されます。今の高齢者は払ったよりも多く年金をもらっているし、年金を積み立てていない高齢者は生活保護を受けているという現状があります。
しかし、高齢者はもらった年金を無駄にしているわけではなく、生活に使っており、高齢者を通じて社会に還元されているのです。高齢者がスーパーで買い物をすれば、スーパーの売り上げが伸び、食品メーカー・農家が儲かります。決してお金は無くなっているわけではありません。低所得の高齢者はもらった年金・保護費はすべて生活のために使っており、得をしているわけではありません。 公共事業をすれば、建設業界にお金が流れます。談合等は問題ですが、お金の流れだけみれば、公共事業で出したお金は、誰かのお金になっているのです。
誰かが儲かっているという不公平の問題は残りますが、社会全体のお金の総量は決して変わらず、お金の流れが消えるわけではありません。
年金で言えば、1965年あたりの生まれの人たちは収支がトントン、1970年生まれだと若干マイナス、もっと若い世代はマイナス2千万にな
るという世代間の不公平の問題はあります。私自身は、「福祉にお金を使うのは無駄だ」という考えはなんとか防ぎたいと思っています。
日本の個人の金融資産は1500兆円あり、それをどう使うのかを最終的には考えていかなければならないでしょう。また政府の借金の問題もありますが、非常に複雑ですので、それは別の問題として考える必要があります。

お金で出来ること、出来ないこと

次に、お金をどう使うことによって、未来をどうデザインできるかということを考えましょう。
お金で出来ることを考える前に、まず「お金で出来ないこと」を考えたいと思います。お金で買えるものはなにか。買えないものはなにか。皆さんはどうですか
。 一般的には「お金で買えないものはたくさんあるだろう」と思っている人が多いでしょう。
よく「幸せはお金で買えない」と言われますが、皆さんはどう考えますか。
幸せとお金の関係は結構複雑です。幸福度調査という調査がありますが、これを見るとある程度は幸せとお金には相関関係があるのが分かります。「幸せはお金で買えない」というのは、お金のある人が言うことで、ご飯も食べられないような人はそんなことは言っていられない、という人もいるでしょう。お金はあったからと言って必ずしも幸せになるわけではないが、お金が無いと幸福度は下がるのではないかと推測されます。
世界にはいろんな経済状況の国がありますが、所得が高いほうが幸福度は上がる傾向にあるようです。例えば日本は成熟社会と言われ、裕福な国に入りますが、そうなると、お金と幸せはあまり関係がなくなり、「お金で買えないものが本当の幸せだ」という考えになってくる傾向にあります。

日本人の考える幸福度

日本は、名目GDPは世界三位、一人当たりGDPは十二位(2012年)であり、経済大国であることは間違いないですが、主観的な幸福度は大変低くなっています。ちなみに幸福度の尺度には主観的・客観的と2種類あり、客観的幸福度は、収入・健康・住居・教育等です。
OECD(経済協力開発機構)が毎年5月に「ベターライフインデックス」という国際調査(住宅・収入・雇用・教育・健康など11項目)を発表しています。日本は先進36カ国中、2012年、2013年ともに21位です。1位はオーストラ
リア、2位はスエーデン、3位はカナダです。日本は全体では21位、項目別に見ると安全(1位)・教育(2位)・家計所得(6位)が高いですが、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)は34位、健康29位、生活満足度27位と低いです。

ワークライフバランスと時間

私もそうですが、日本人は働いてばかりいる印象があります。1995年秋にフランスに留学したとたんに、交通ストライキがあり3カ月、学校に行けませんでした。その後トラック運転手のストライキがあったのですが、その際の要求は定年55歳を50歳にしろ、ということでした。それに引き換え、日本では65歳までの雇用延長をする法律が出来ました。
ワークライフバランスが悪いと、ご主人は給料を運ぶだけになり、家庭で居場所が無くなってしまいます。女性は子育てとキャリアの両立が難しく、必然的に出産して家庭に入るか、仕事を続けるかを選択しなければならなくなります。日本の少子化の一番の原因は仕事のしすぎだと思います。男女が知り合って結婚するのには時間が必要ですが、その時間が取れません。
同様に消費をするのにも時間が必要です。需要が少ない一方で、日本人は真面目に働くので生産力が大きく、年間で10兆円の需要不足です。当然物価は下がってきてデフレが進行します。 私のいるメディアの世界は消費するのに時間がかかります。忙しければ読みたい本を買っても読めず、本を買う量が減り、映画を見る本数も減ってしまいます。日本の需要不足・デフレを解消するには、ワークライフバランスを見直して、人々に消費をする時間を与えなければならないと思います。
よりよい社会を作っていこう、もっと消費を拡大していこう、人間らしい生活をしようと考えるのであれば、時間の問題をもっと考えなければなりません。消費に使う時間、家族や友人と使う時間をもっと増やす努力が必要です。

お金と幸福度

PHOTO 幸福度に話しを戻すと、日本人の平均寿命は世界トップであり、女性は86.44歳、男性は79.56歳、これが2050年になると男性は80.9歳、女性は89.22歳となります。そのころ私はちょうど80歳になるので、私がその年齢に到達しているか個人的関心があります。
日本人は健康であるにも係らず、自己申告健康度では、36か国中36位です。何でだと思いますか。世界一の長寿国なのに、健康でないと大半の日本人は言います。「自分は健康だ」と答えた人は30%しかいません。
「幸せはお金で買えない」と多くの人が思っているし、哲学の授業で「お金で買えないものはなに」と聴くと多くの学生は、「幸せはお金で買えない」という回答になります。日本はお金と主観的な幸福度が大変乖離してしまっています。お金があるということと、幸福度が結びつかない社会なのです。私たちはお金の効用、お金の限界を非常に低く見積もっています。日本は、お金に対して結構ネガティブな感情を持っている社会であると言えます。
このように、多くの日本人は「お金でできることはそんなに無い」と思っています。しかし、私は、出来るだけ多くの人が幸福を感じられる社会にデザインしましょうということをまず言いたいと思います。

お金の価値を支えているのは「信用」

PHOTO もう一つ、「お金とは何か」ということを考えたいと思います。
皆さんのポケットにあるお札には、これには「日本銀行券」と書いてありますが、言うなればこれは「紙」であり、紙そのものに1万円という価値があるわけではありません。ではなぜ皆さんは1万円の価値があると思っているのか。
昔は、紙幣は金兌換券であり、銀行に持っていけば金と引き換えてもらえました。しかし今はその制度が無くなりました。では、お金の価値を支えているものは何なのでしょうか。
一言で言えば「信用」です。では「信用」とは何でしょうか。国が価値を保証してくれるだろうという「信用」もあるでしょうし、銀行が持っている「国債」を買うという名目でお金を社会に供給しているのが日本銀行ですが、実はお金の価値を支えているのは、この日本銀行が持っている「国債」なのです。
つまり、「日本銀行への信用」=「政府の信用」=「国民の経済力」が信用を支えていると言えます。お金とは何かを考えると、つまるところお金とは「信用の賜物」なのです。お金をやり取りするということは、実は信用をやり取りしていることに他なりません。
日本には1500兆円の資産がありますが、もっとも大事なのは、これだけの量の貨幣を流通させることができる日本経済・社会への信用なのです。

日本社会・企業への信用

世界に200年以上続いている企業が5000社ありますが、そのうち6割の3000社が日本にあります。(帝国データバンク調査による) 世界でもっとも古い企業を知っていますか。「金剛組」と言う法隆寺を建立した会社です。創業が578年です。二位は甲州西山温泉「慶雲館」で創業705年、三位は「城崎温泉 千年の湯古まん」で創業717年です。
他に200年以上続いている会社に武田薬品工業、住友金属工業などがあります。100年以上となると26000社もあるのです。こうした企業はほとんどが「社訓」というものを持っています。 アメリカの「フォーチュン」の世界企業売上高トップ500に、1970年にリストアップされていた企業の6割がもう存在していません。短期の利益を目当てに企業経営をしても、企業の存続は難しいと言えるのではないかと思います。
一方、日本に本格的資本主義が導入される前から続いている企業が多く残っているということは、短期の利益よりも、「信用」を大事にし、それを企業の大事な財産にしてきたからではないでしょうか。
最後に、日本は、歴史的に形成してきた「信用」を大事にして、消費行動を通じて社会をデザインして未来を作っていくことができるということをお伝えいたしたいと思います。

ミニコンサート 「二つの弦が絡み合う美しい響き」

  • PHOTO 演奏:カメリア・トリオ
     椿太陽さん(バイオリン)
     田中浩介さん(チェロ)
     横塚晶子さん(ピアノ)

  • PHOTO 休憩を挟んで、若手音楽家集団カメリア・トリオのコンサートを開催しました。 選曲はクラッシックからなじみのある映画音楽まで幅広く、2つの弦(バイオリン・チェロ)とピアノの絡み合う若々しく美しい音色で、大変好評でした。

  • PHOTO この6月に釜石を訪問しコンサートをした時に、現地の方々に「釜石のことを東京の人に伝えてほしい」と言われた話に触れ、「東京から遠い釜石は復興が遅れている。釜石のことを頭の片隅に置いておいてほしい」という椿太陽さんの言葉が感動を呼びました。

ミニコンサート曲目

  • ニューシネマパラダイスメドレー(モリコーネ)
  • 世界の約束(木村弓)
  • おひさま~大切なあなたへ~(渡辺俊幸)
  • ツィゴイネルワイゼン(サラサーテ)
  • パッカサリア(ヘンデル)
  • ピアノトリオ第一番より第一楽章(メンデルスゾーン)
  • アンコール 魔女の宅急便~旅立ち~(久石譲)

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