オンライン講演会「多摩から発信~持続可能でやさしい未来へ ごみ収集の現場からみた“ごみ育”」を開催いたしました。講師にお笑い芸人の傍らごみ清掃員として勤務している滝沢秀一さんをお招きし、現場で得た経験を交えながら、ごみ収集の現状やごみを減らすにはどうしたらよいか、ごみ問題についてご講演頂きました。
講演中はオンライン上で質問を受付け、講師と視聴者・会場参加者が交流することができました。
以下は講演の概要です。
清掃員は朝6時半出勤。8時から回収を始め、16時前後に終了し、ほぼ1日中ごみを収集しています。皆さんも目にしたことがあるごみ清掃のパッカー車は満杯で2トン、ごみ袋900個分を積んでいます。これを1日で6回満杯にするので、パッカー車1台で10トンから12トンを回収しています。清掃工場には何十台もの清掃車が集まるのですから、地域でこれだけ出るのであれば、東京でどれだけ、日本でどれだけの量になるのか必然的に想像するわけです。
ごみは何種類あるかご存じでしょうか。正解は可燃ごみと不燃ごみの2種類だけです。ペットボトル、缶、ビンは再生可能な資源で、ごみではありません。これがポイントです。
![]() 講師の滝沢秀一さん |
花やビンや古紙などと一緒に置かれた集積所から清掃員がペットボトルを回収するのは手間がかかります。本来集積所は基本的にごみを出すところですが、ごみ箱のように何でも入れる人や、網の中に入れず上や横に置いたりする人もいます。すると、風が吹いたり雨が降ったりして、軽いペットボトルは道路に流されてしまうのです。日本では年間262億本のペットボトルを消費しています。回収率は93%、ほかの国は40%くらいなので、日本はよく分別されていて優秀です。しかし、7%が行方不明で0.1%が川に流れたとすると180万本が海に行きます。昔はビンだったワインや調味料などもペットボトルになり、以前より格段にペットボトルの使用が増えています。頼りすぎていると思います。そこで私は11年前に買ったマイボトルを今でも大切に使い、持ち歩いています。
古紙回収では、段ボールは段ボール、新聞は新聞、雑誌は雑誌でリサイクルされています。清掃員はひもで結ばれていればひもを切り、種類ごとに分別しながら回収しています。雑誌の間に牛乳パックがはさまれていると、素材が違うので資源ではなくごみになってしまいます。リサイクルのために、せっかく洗って乾かしているのなら、正しい出し方を知っていただきたい。例えばスーパーなどきちんと分けて回収されるところに出す、集積所に出すなら清掃員にわかりやすいように分別してもらえるとありがたいです。集積所をきれいに保つことが大切だと思います。基本的にコミュニティがしっかりしていると、協力体制がうまくいっています。
A町とB町、道で隔てられた2つの町があるとします。A町はペットボトルのラベルやキャップを取っていますが、B町は全く取らずに捨てています。引っ越した日に集積所を見てペットボトルのキャップやラベルがついていると、この町ははがさないで出して良いのだと思い、反対に集積所のペットボトルにキャップやラベルがついていないと、ついたままのペットボトルは捨てにくいと感じます。自分の出したごみは人に影響を与えるわけです。ごみはごみを呼びます。
私は自分の住んでいるマンションの集積所ではペットボトルの出し方が雑だったので、1年間くらい他の人が出したペットボトルのラベルやキャップをはがし続けてみるという実験をしてみました。そうすると、みんな協力してくれるようになり、ペットボトルのラベルやキャップをはがして出すようになりました。見本があればそれに従ってくれることがわかりました。
港区の可燃ごみ組成割合のデータをみると、可燃ごみの紙とプラスチックのうち、合わせて25%は資源となり再生できるものです。分ければ資源、混ぜればごみ。可燃ごみとして出されたものは燃やすしかありませんが、可燃ごみの中には資源として使えるものもまだまだいっぱいあります。皆さんが分別してくれたら、資源として使えてごみの量も減ります。
各家庭で絞られていない生ごみから出る汁を我々清掃員は「ごみ汁」と呼んでいます。体感としては6割の方が絞らず生ごみを出しています。生ごみ触りたくない気持ちはわかりますが、絞ってほしい。生ごみの80%は水分、雑菌が繁殖し、ごみや清掃車が臭くなります。
水は重いので運ぶためにエネルギーを使い、より多くのCO₂を排出しますので環境にも良くないです。焼却炉で燃やす際に水があると燃えにくく焼却に時間かかかるためより多くのCO₂を排出し、早く焼却するために重油を足せばその分税金がかかります。
私はコンポストを使っています。黒土コンポストに生ごみをいれると、バクテリアが食べてくれて生ごみが無くなります。バクテリアは、夏は動きが早く、冬は動きが鈍いのですが、水が好きなので、生ごみを絞らなくてもよい利点があります。
・食品ロス
秋には米が捨てられます。新米を買ったからといって全く傷んでいない古米を捨てる人がいます。実りの秋には、売り物かと思うような柿やなし、りんごなどの果物も捨てられます。ピザを1枚買ったらもう1枚プレゼントというキャンペーンで、「お得だから」ともらったピザが食べ切れず、1枚そのまま捨てられます。おまけや無料の物、ふるさと納税の返礼品、お中元お歳暮のシーズンにはメロンも捨てられています。まだまだ食べられるのにもったいない。物には価値を与えなければならないと思います。レジ袋有料化も基本的には賛成です。レジ袋が無料の時には集積所にばんばん出されていたが、それが減っています。もらえるともらいすぎてしまい、ごみになる。2円でも3円でもお金を払うとそこに価値が生まれるし、そもそももらわなかったりします。
食品ロスは事業系が55%占めていますが、配送用の箱の破損、時期やイベントが終了したものは食品ロスになります。食べなければ捨てればいい、という考え方を変えなければならないと思います。世界援助食糧は1年で420万トン、日本の食品ロスは約522万トンで世界援助食糧の1.2倍捨てているわけです。
・ファッションロス
11年前はあまりなかったがここ数年衣類のごみが多い。最近は洋服が安いのでみなさんたくさん買ってはどんどん捨てています。一時期、断捨離がブームになりましたが、衣服を買って捨てることは習慣化しています。ある程度買って、家が手狭になると大量のごみを出すのです。新品のようなコートが捨てられているのを見てびっくりします。
ものを作るのには資源を使い、燃やすのにはエネルギーを使います。洋服を買って捨てることは環境に負担をかけています。
―集積所をきれいに使い、分別してごみの量を減らすことが重要です。なぜか、日本はごみで埋まるから。
すごい量のごみが各家庭から出ます。清掃工場で燃やしたあとのごみはどうなるのでしょうか。40分の1の大きさに小さくなるが、灰が残ります。東京の最終処分場、中央防波堤では、可燃ごみを焼却して処理した灰、不燃ごみを粉砕したものを埋めていますが、あと50年でいっぱいになり埋められなくなります。環境省のホームページによると、日本の最終処分場の寿命はあと22.4年です。国は対策をしていますが、それでも20年ちょっとでごみが捨てられなくなるのです。
埋めなくて済むように、灰をスラグ化してアスファルトに混ぜる、コンクリート2次材に活用するなどしているが大変コストがかかります。また、処分場がなく、他の自治体にお金を払って処理してもらっているところもあります。ごみは捨てて終わりではなく、維持しなければならない。維持には多額の税金がかかるのです。
![]() 視聴会場の様子 |
まず家庭から食品ロスをなくす、そしてごみを減らして資源を増やす、自分の自治体のごみカレンダーを見て分別することが大切だと思います。
「ラストロング=愛するものを長く使う」「ジャストイナフ=過不足なく、足るを知る」この2つの言葉を紹介します。自分にとって必要なものを購入し大切に使う、このことを心掛けてほしいと思います。
Q:ペットボトルや紙パックにプラスチックの注ぎ口がついているものなど素材が混在しているものを捨てる時に苦労します。素材を統一するのか、効果的なごみ処理を考えるのか、私たちがきちんと出せばよいのか、どうすればよいと思いますか。
A:素材に関しては、プラスチックについては法律の基準に企業が従うのが望ましいと思います。
各自がきちんとごみを出すことに関しては、まず、正しい知識を持ち分別することが大切です。ご自分の自治体のごみ出しのルールを知ってほしい。そして、周りに知らない人がいたら、教えてあげてほしいと思います。
Q:プラスチック容器が多用されているが、食べ物や油がついているときは資源か可燃ごみ、どちらで出すのか悩んでしまいます。
A:基本的には、軽く水でゆすいできれいになったらプラスチック資源、洗剤で洗うと水を汚すことにもつながるので、汚れがひどいものは可燃ごみでよいと考えています。ただし、自治体によってルールが違うので、確認してください。
・楽しくわかりやすいお話でした。買い物をする段階から処分することを考えないといけないと思いました。
・まだ着られる服や食べられる食品をどんどん捨てている人がいることを知って驚きました。
・分ければ資源、混ぜればごみ。資源として再生できるようにきちんと分別しようと思います。
・最終処分場の寿命があと22年と知り、今まで以上にごみの減量に努めなければと感じました。
・コンポストに挑戦したいと思います。
・オンラインで気軽に参加できてよかったです。
会場では、フードドライブを実施しました。品数で47点、重量で12.5kgの食品が集まり、フードバンク立川に寄付致しました。ご協力いただきました皆さん、ありがとうございました。
![]() フードドライブに集まった食品の数々 |