誰もがくらしやすい未来へ~10月は東京都消費者月間です くらしフェスタ東京2021

交流フェスタ 見て、聞いて、話そう!

メインシンポジウム

東京の農業応援企画

エコプログラム

地域会場

協賛事業

  • 東京都消費者月間事業とは?
  • イベントスケジュール
  • これまでのあゆみ 昨年度までの活動もご覧ください
  • Facebook お友達になりましょう
  • ツイッター フォローをお願いします
  • おすすめリンク集
【東京のがんばる農業応援企画】

食と農セミナー イベントレポート

食と農セミナー 講演会
「東京を耕す~農業と地域住民のかかわりを探る~」(オンライン配信)を開催しました。

開 催 日:2021年12月9日(木)14:00~16:00
オンライン限定配信
視聴者数:82人
共  催:東京都消費者月間実行委員会
      東京都農業経営者クラブ
      一般社団法人東京都農業会議
      公益財団法人東京都農林水産振興財団
講  師:後藤 光蔵さん
      (武蔵大学名誉教授)

 「東京のがんばる農業応援企画」として、毎年「農業応援バスツアー」と、「食と農セミナー」を開催。農業者と消費者の交流を図ってきました。昨年からは、コロナ禍の中、講演会のみの開催となりました。
 冒頭、東京都消費者月間実行委員会 平野祐子委員長、(一社)東京都農業会議 青山佾会長、(公財)東京都農林水産振興財団 岩瀬和春理事長から開会の挨拶があり、皆さんから、「来年はぜひ直接の交流の機会を持てることを祈念している」とのお話がありました。


はじめに

 本題に入る前にお話しておきたいのは、2019年、練馬で開かれた世界都市農業サミットのことです。欧米から来た参加者が口々に東京のような大都市で「身近に農地があり農業と触れ合い新鮮な野菜が食べられるのはうらやましい」と言っていました。農地がなくなったロンドンでは、オリンピックに合わせてコミュニティガーデンを作り住民が共同で野菜を作る取り組みが真剣に進められました。市民の誰でもが歩いて行けるところにコミュニティ農園がある都市がニューヨークの目標です。都市に農地を作り住民が農作業に汗を流しコミュニティを再生しようとする取り組みが行われています。
 東京でも今一度、身近にある農地の役割と機能を考え、農地があるのですからそれを保全する努力をしていかなければなりません。そのための消費者の役割はとても大きいのです。


Ⅰ.東京の農業の特徴と課題

 日本の都市の特徴は、宅地と混在して農地が残り農業を仕事とする農業者がいることです。しかし「都市に農地は不要」とする1968年の「都市計画法」は都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分け、市街化を促進する市街化区域の農地は固定資産税の宅地並み課税により、10年で宅地に転換する方向が決められました。
 しかし、地図にありますように東京では市街化区域が広くそこに大量の農地が存在し10年で宅地化する計画には無理がありました。また都市にある農地・農業の役割が少しずつ市民に理解されるようになってきました。紆余曲折がありましたが「農のあるまちづくり」が提起され、日本特有の農地のある都市の在り方の方向へ動いてきたのです。

 その線上で2015年都市農業振興基本法、2016年都市農業振興基本計画が作られ、都市に農地は「あって当たり前のもの」「あるべきもの」と理念が180度転換されました。一つは農業政策上の視点からです。少量多品目・直売型で収益性の高い都市型農業経営が作られてきたことや都市住民の身近で作られる農産物への安心感や信頼感が評価され振興施策によって支援する方向への転換が謳われました。都市農地・農業が持つ、農産物の生産・供給以外の防災空間や環境の保全などの多様な機能も注目されたのです。都市政策上でも、人口減少が始まり都市はコンパクトシティを目指す方向に転換しています。農地を宅地や公共施設の予備地とみなす時代ではなくなってきたのです。
 しかしながら、農地の減少、後継者不足には歯止めがかかりません。市街化区域内の生産緑地(赤線)と宅地化農地(緑線)、その合計面積(青線)の推移のグラフを見てください。1993年から2020年の間に、保全する農地である生産緑地も都全体で約26%、区部では約32%減少しています。

 2022年には多くの生産緑地が指定後30年を経過し生産緑地の指定解除が所有者の意向で自由になります。どのくらいの生産緑地が解除されるか今手続きの最中です。その対策として10年間の耕作義務が伴う特定生産緑地制度ができましたが、それは今後10年毎に再指定の手続きをするかどうか所有者が判断することになるので、生産緑地も不安定化します。


Ⅱ.地域住民と農業・農業者との多様な関わり

 地域住民は農地の維持にどんな役割を果たしているか。まず特徴的な地域住民と都市農業・都市農業者との関わり合いから見ておきます。
 一つ目は、「農業体験農園」です。農業者が経営の一環として行っている農業のカルチャースクールのようなものです。ポイントとなる農作業について何回か講習が行われ、後は家族で自由に来て作業をします。収穫祭のような行事もあり、参加者同士親しくなり地域のコミュニティができています。プロの指導で多くの品目を作り出来栄えも良いので、参加者の満足は大きいようです。アンケート調査結果を見せていただくと「農業所得が増えた」(63%)「多くの人たちと交流ができて楽しい」(87%)「消費者と触れ合えて農業のやりがいができた」(74%)など農業者にとっても満足の大きい取り組みです。
 二つ目は、自治体が農家と消費者をマッチングする「援農ボランティア」です。援農ボランティアになるための講習の受講が必要な自治体と必要でない自治体があります。受け入れる農家が少ないとか、ボランティアは高齢者が多く今後の継続性などの問題はありますが、住民も農家も満足が得られています。現在農業委員会のある44自治体中、22自治体で実施されています(7区中6区、28市町16市)。
 東京都農林水産振興財団はWebで「広域援農ボランティア」を運営しています。ボランティアの登録条件は、高校生以上、経験不問です。受入農家の情報を見て、援農の希望を連絡します。確定すればメールが財団から送られて来て、農家に行って農作業をすることとなります。1回だけでも参加できますし、土日でも参加できますので、自由度が高く若い人にも好評です。
 NPOの援農ボランティア活動もあります。町田市の「NPO法人たがやす」では、2020年は76名のボランティアが35戸の農家で援農しています。賃金ではなくお礼の意味での「有償」のボランティア制度が特徴です。年間を通して週に何日かコンスタントに参加する人が柱になっていますが、一人一人に合った形で農家を応援しています。農家の受入れ方も多様ですが、それぞれの農家にとって大きな支援になっていると言えるでしょう。援農だけでなく、直売所の設置や野菜セットの配達による地場野菜の消費普及で農家を支援する活動、活用されていない農地や農業継続が困難になった農家の農地を借り入れて様々な活動も行っています。地域農業・農家の支援から自ら地域農業を担う役割も果たすようになってきていると言えるでしょう。


Ⅲ.多様な関わりが生み出す新しい動き

 住民が主体となって農家の支援を受けながら地域の課題の解決に取り組む活動もみられます。
 「NPO法人くにたち農園の会」は、2016年に法人化し、農地を借りてコミュニティ農園を作り「農が身近にある暮らし」の実現を目的に活動しています。貸し農園やお米作りの他に、田畑とつながる子育て支援事業を開始し、農園での「森のようちえん」や「放課後の子ども達の居場所作り(学童クラブ)」、仔馬とのふれあい事業など、さまざまな活動を展開しています。

 西東京市の「みんなの畑」は、福祉と農業の連携によるまちづくりをめざす西東京農地保全協議会の取り組みです。畑の農作業に農業に興味のある地域の人をだれでも受け入れ、農のあるまちづくりをコーディネートしている団体です。会員が中心になって畑を耕作し、イベントも開催しています。コミュニティづくりを目指して、農福連携(ハンディキャップを持っている人たちの就労支援)を週に1回実施。就労継続支援事業所(B型)の人たちに農作業を手伝ってもらい、対価を支払っています。
 環境の視点から生ごみのたい肥化に取り組み市民の作ったたい肥を回収し、農家の畑を利用して農産物を作っているグループもあります。


おわりに

 農業体験農園の人々の繋がりの中から、新しい取り組みも始まってきています。
 例えば減災の取り組みです。体験農園には農業用井戸、ビニールハウス、炊き出し用の備品などがあり、また農園の人たちは収穫祭で炊き出しの経験も積んでいます。これらを活かして防災訓練に参加する体験農園が出てきています。また体験農園で収穫した野菜をおすそ分けとして、子ども食堂や一人親家庭の支援の取り組みも始まっています。その中から子ども食堂や一人親世帯の関係者が体験農園に参加し、一緒に野菜づくりを行うなどの地域の人々の繋がりも広がってきています。
 災害、気候危機、貧困・格差、住民の分断等、都市の抱える課題が顕在化してきていますが、これらの課題解決に農地・農業が大きな役割を果たす可能性があります。住民は農地・農業を活用して都市の抱える課題を解決するまちづくりの担い手としても期待されているのです。
 課題はやはり農地の減少です。指定後30年を経過する東京の生産緑地は2,523ha。今ある農地を最大限に活用しながら保全し、農業者と行政、農業者と消費者が手を結んで、都市の中に混在している農地を守っていってほしいと願っています。


参加者との交流(質疑応答)

Q:ボランティアと農業者とのマッチングは具体的にどのように行われているのか。
A:(行政):市報で募集をしている。応募があった人の希望を聞き、農協と協力して受け入れ先をマッチングする。希望としては野菜がいいとか、花がいいとか。また住んでいる地域も参考にする。
A:(農家):受け入れ農家としては、週1回の割合で、午前中に作業をしてもらっている。主に野菜の苗の植え付けや芽かき、収穫など。


Q:一般消費者が地場野菜の購入をしたいと思うとき、どうやって探したらよいか。
A:(農家)直売所を設けている農家がある。私のところでは、野菜の自動販売機を設置し、朝9時から夕方6時まで販売しているが、コロナの影響か、人気があり完売している。小学校から農地の見学があれば受け入れ、収穫体験も行っているが、小学生の保護者が野菜を買いに来たりして、地域の人たちに理解されるようなっている。


Q:障害者雇用として、どのようなことがあるか伺いたい。
A:(農業会議)雇用とまでいかないが、都内でもデイサービスの一環として障害を持った人を受け入れている農家がある。ハウストマトの栽培や養鶏農家の手伝い、花卉栽培などを就労体験として行っている。福祉作業所に出荷作業の委託を行っているケースもある。


参加者アンケート

・「援農」という言葉をこの講演で初めて知りました。2週間前にある有機農園で練馬大根を掘る体験をしました。楽しくて、もっと継続して手伝いたいと思いました。
・東京都という大都市に農地があることは、決して当たり前ではなく、農業者や行政の努力の賜物であることが分かりました。
・生産緑地についてあまり知らなかったのですが、法規制、経緯も含めて解説くださり、理解が深まりよかったです。
・農業の縮小と農地の減少に歯止めがかからない。最近、近所でそこそこ広かった農地がマンションに変わってしまって、とても残念です。

PAGETOP