誰もがくらしやすい未来へ~10月は東京都消費者月間です くらしフェスタ東京2021

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【メインシンポジウム】「気候変動と脱炭素社会」について学びましょう

メインシンポジウム イベントレポート

メインシンポジウム オンライン講演会
「未来を変えるための私たちの選択  ~気候変動と脱炭素社会~」

配信期間:2021年10月12日(火)10時~同年12月14日(火)17時
視聴回数:第1部 299回
      第2部 238回
      第3部 213回
主  催:東京都消費者月間実行委員会
講  師:江守 正多さん
      (国立環境研究所地球システム領域副領域長)

 コロナ禍の影響により昨年に引続き、オンライン講演会を行いました。今年度は申込み不要の公開配信で実施しました。
 講師は気候変動に関する研究者の国立環境研究所の江守正多さん。今年8月に発表された、IPCC(注釈1)の第6次報告書を受け、気候変動と脱炭素化社会について、私たちのくらしを考えていくお話をしていただきました。
 以下は講演の概要です。

第1部:地球温暖化とそのリスク

 IPCCは世界中の科学者が集まり、気候変動に関して科学的に何が分かっているかを取りまとめる政府間パネルで、2021年8月に第1作業部会から第6次評価報告書が発表され、「20世紀後半以降の人間活動の影響が気候システムを温暖化してきたのは疑う余地がない」と、初めて断言されました。

講師提供資料1
(講師提供資料1)

 (上記グラフによると)1850年から1900年頃と比べて、2010年から2019年までに観測された世界平均気温の変化は+1.06℃。自然要因のみに比べて、人為要因がシミュレーションに加わることにより大気中の温室効果ガスが増加し気温が上昇します。

講師提供資料2
(講師提供資料2)

 (上記グラフによると)最近の気温上昇は過去2000年間で前例がない特別な上がり方であり、二酸化炭素(以下、「CO₂」という。)の濃度は、過去80万年では10万年ごとに180 ppm から280 ppmで変動していますが、最近の200年間くらいで410ppmぐらいまで上がっています。人間という一つの生物種が地球環境を変える一番大きな原因という、地球の歴史上で特殊な時代に我々は生きています。
 地球温暖化が続くとどうなるか。極端な大雨、暑さや寒さなどの「異常気象」(ある場所で30年に1度程度起きる稀な気象)が増えます。産業革命前に50年に1度だった記録的な暑い日が、世界平均気温が1℃上昇した現在では産業革命前の4.8倍、1.5℃上昇すると8.6倍。2℃上昇で13.9倍、4℃上昇では毎年起きます。
 異常気象以外のリスクは、海水が温まって膨張し陸の氷が解けて海水が増える「海面上昇」。「洪水」の増加。台風などの「極端な気象現象」。「熱波」。干ばつが増え食料や水が危機になり、「難民増加」。「海や陸の生態系への悪影響」などがあります。
 考えるべきは「適応策」で、防災の強化、農業では作付時期の変更や品種改良、熱中症に適切に対応するなど変化する気候に社会全体が備えなくてはなりません。日本でも「気候変動適応法」という法律が2018年12月からスタートしていて、国が日本全体の影響評価をして適応計画を立て、各自治体がそれぞれの地域に合った計画を立てて備えていくことが、非常に重要です。
 深刻な影響を受けるのは誰か。「発展途上国」の人たちと「沿岸地域、あるいは小さい島国の人たち」。乾燥地域では干ばつが進むと食料危機などに、そして海面上昇では住むところを追われる心配があります。大事なことは、彼らにはほとんど原因・責任がないことです。CO₂をたくさん出しているのは、我々先進国や新興国の人たちで、本当に少ないCO₂しか出していない彼らが最も深刻な被害を受けることは、非常に不公平で人権問題とも言えます。
 もうひとつは、「将来世代」。今後、さらに温暖化が進むと、後の世代がより深刻な影響が出た地球で、より長く生きていかなくていけません。しかもその原因をつくったのは、前の世代です。我々はこういう問題を認識して、その不公平を是正していこうという考え方を「気候正義 Climate Justice」と言い、この問題を考える非常に重要な考え方になっています。


(注釈1)
IPCC(The Intergovernmental Panel on Climate Change/気候変動に関する政府間パネル)
各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的として、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により 1988 年に設立された政府間組織。2021 年 8 月現在、195 の国と地域が参加している。
世界中の科学者の協力の下、出版された文献(科学誌に掲載された論文等)に基づいて定期的に報告書を作成し、気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供している。


第2部:脱炭素化に向けて

 この問題を世界、日本でどう対応しようとしているか。
 2015年にできたパリ協定は、世界全体で気候変動問題、地球温暖化問題に取り組む枠組みです。パリ協定の長期目標は、「世界的な平均気温上昇を、産業革命以前に比べて2℃より低く、1.5℃に抑える努力を追求する」とされ、「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と、吸収源による除去の均衡を達成する」つまり、人間活動で出すCO₂と吸収する量をつり合わせ人間活動が排出するCO₂をゼロにする「カーボンニュートラル」にしないと、温度上昇は2℃とか1.5℃で止まらないとされています。
 IPCCの報告書では、2100年までのCO₂排出量の違いによる5つの将来のシナリオが設定されました。
 シナリオ「非常に低い」は1.5℃くらいの上昇、シナリオ「低い」が2℃ほど。シナリオ「中間」は2℃から3℃、シナリオ「高い」は4℃ぐらい、シナリオ「非常に高い」では2100年4℃より上がります。最近、この1.5℃をどれぐらい超えるか注目されていて、今から20年間に1.5℃を超える可能性が五分五分以上と報告されました。シナリオ「非常に低い」は50%未満ぐらい、1.5℃はもう目前に迫った温暖化です。
 気温上昇のシミュレーション結果の世界地図(講師提供資料3)では、上が CO₂排出量が「非常に高い」、下が「低い」シナリオに相当する図です。

講師提供資料3
(講師提供資料3)

 自然の変動がありながら変化し、パリ協定の長期目標を遵守した下は2050年前後で温度上昇を示す赤の範囲の拡大が止まるが、上はより温度が高くなり、2100年には世界全体で平均4℃ぐらい上昇します。温度の上がり方は場所によって違うため、平均では4℃ですが、5℃、6℃、7℃、8℃と上がるところがあると予測されています。
 他に、世界平均の海面水位の見通しは、現時点ですでに20㎝ぐらい上昇していて、CO₂排出量が「非常に低い」場合の1.5℃で温暖化が止まっても2100年には50㎝、温暖化が進めば、最悪1mぐらいの海面上昇が見通されます。加えて、もし万が一、南極の氷が不安定化してどんどん減ると、もっと海面が上昇するとされています。注目すべきは、1.5℃あるいは2℃で気温上昇を止めても、海面上昇は2100年まで続くこと。この上昇は2100年で終わりではなく、2300年ではシナリオ「低い」でも50㎝から3m、シナリオ「非常に高い」だと2mから7mの海面上昇。特に南極の氷が不安定化した場合には、15mまで上昇するおそれがあります。つまり、海面上昇はこの先、数百年も数千年も続くとされるプロセスを、すでに我々はスタートさせてしまっているということになり、世界中で対策の強化が必要です。
 どうすれば、世界のCO₂排出量をゼロやマイナス、つまり、脱炭素化できるか。
 まずは、エネルギーの脱炭素化。具体的には1つは省エネ。2つ目に再生可能エネルギーの利用。再生可能エネルギーとは太陽・風力・バイオマスなどで、太陽・風力は自然の条件での変動安定化などの対策が必要。そして原子力は、事故の心配や核廃棄物の処理など課題があり使用するかは別問題です。化石燃料を使用するが、出たCO₂を地中に封じ込めるCCS(注釈2)という方法。あるいは、そこから社会に役に立つものを作るCCU(注釈3)という考え方。それから燃料を電気や水素、バイオマス、合成燃料などに置き換えてCO₂を出さずに作る。例えば、太陽光パネルで作った電気で電気自動車を走らせるなどです。
 一方、大気中のCO₂を吸収する方法は、大規模な植林。バイオマスエネルギーを作り、使う時や作る時に出るCO₂は地中に封じ込める方法。あるいは、直接空気回収という、化学反応で大気からCO₂を吸収する方法。他にもCO₂以外の温室効果ガス(メタン、N2Oなど)をそれぞれ可能な限り減らす対策をする。これらを徹底的に世界中で行えば、CO₂排出ゼロ、温室効果ガスも大幅に減らせるのではないでしょうか。
 次に、世界で利用されているエネルギーの約8割が、石炭・石油・天然ガスです。石炭は最近減少していますが、石油・天然ガスは、発展途上国や新興国の需要増で消費が現在も増え続けています。
 一方、CO₂を出さない原子力・水力、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの利用は加速度的に増えています。
 しかし、絶対量はまだ少なく、再生可能エネルギーをさらに増やし、最終的には化石燃料をほとんどこれで置き換えることを世界が目指しています。
 日本でも、世界の目標に沿った日本の目標を作り始めました。今までは2050年に80%減でしたが、昨年10月に菅首相が2050年に日本も脱炭素、実質ゼロを目指すと宣言しました。2030年の目標も、2013年比で26%削減としていたものを、46%削減に引き上げました。日本のCO₂排出量は、2009年頃にリーマンショックで経済が悪化して減りましたが、2011年に東日本大震災、福島第一原発事故があった後、原発が止まって火力発電所が増えました。
 その後、太陽光パネルの増加や原発がいくつか稼働して比較的順調に減少。ここから2050年までにゼロまで減らすこととすると、大体2030年に46%削減となります。日本全体でこれを目指していくことになっています。日本は国土が狭くて再生可能エネルギーを増やせないという説がありますが、環境省の調査では、ポテンシャルは十分あるとされています。

講師提供資料4
(講師提供資料4)

 (上記)グラフの左側が日本の現時点での電力需要で、 現在はほとんど化石燃料で発電しています。右側が、現在の経済性を考慮した日本の再生可能エネルギーのポテンシャルで、今の電力需要の2倍以上です。大部分は洋上風力、海上風力発電で、今後開発していくことが重要です。それから、陸上風力と太陽光。しかし、真ん中のグラフにあるように究極的なポテンシャルはもっとあります。今後の技術の進歩でさらに増えていき、電気自動車など電化が進んでも必要なエネルギーもまかなえる可能性があります。ただし、課題は日本では再生可能エネルギーコストがまだ高い。再エネの電気が使える系統接続。太陽や風力の変動にバランスする柔軟性の確保。乱開発の是正には住民の合意を取り、環境に配慮して再生可能エネルギーが増えていくことが必要になります。


(注釈2)
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)
発電所や化学工場などから排出されたCO₂を、ほかの気体から分離し、地中に貯留・圧入すること。
(注釈3)
CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)
分離・貯留したCO₂を利用すること。


第3部:社会の大転換と危機の「出口」

 脱炭素という大きな社会の変化ができるか。どういう考え方でこの問題に取り組むべきか。
 2015年に「あなたにとって気候変動対策はどのようなものですか?」と世界の人々に調査した結果、世界では温暖化対策をすればするほど生活が良くなると思っている人が多いが、日本では悪くなると思っている人が多い。それは、日本では我慢だというイメージが強いということです。便利や快適は諦めて昔の生活に戻れと言われている気がしてしまうのです。が、それではゼロまで減らせません。社会の「大転換」(Transformation)が起きる必要があります。特に社会の「大転換」とは、単なる制度や技術の導入ではなく、人々の世界観の変化。人々のものの考え方や見方が変わり常識が変わることです。過去の例では、産業革命や奴隷制廃止。常識が変わった身近な例に分煙があります。30年前ぐらいは、道や乗り物などどこでもタバコを吸う人がいるのが当たり前でしたが、今は決まった場所でしか吸ってはいけないのが当たり前で、常識が変わりました。
 同様に、今の常識だとエネルギーを作るとCO₂が出るのが当たり前でしたが、常識が変わって、エネルギーを作ったり使ったりする時にCO₂は出ない、昔は出していたなんて信じられない、と今を振り返る時が来るのではないか。それが常識の変化、「大転換」です。
 「脱炭素」と言うと難しいことを無理してやろうとしている気がするかもしれませんが、「卒炭素」ではないか。少し前までは化石燃料の問題は枯渇でしたが、今は常識が変わって、化石燃料は余っているのに使わないで埋めておく。そうしないと、パリ協定の目標を達成することはできないです。「石器時代が終わったのは、石が無くなったからではない」。それは、青銅器や鉄器ができたから。同様に、人類が化石燃料文明を卒業するのは化石燃料を使い尽くした時ではなく、それよりずっと前、化石燃料よりももっと良いエネルギーやエネルギーのシステムを、全人類、世界で使えるようになったときに、化石燃料はいくら余っていても誰も見向きもしなくなる。今、再生可能エネルギーが世界中で普及して、どんどん安くなっています。あとできれば30年、2050年までに卒業したいと、少しでも多くの人が、この問題に興味をもって、早く卒業できるように後押し、加速や応援をすることが必要になってきます。
 気候危機の出口は何か、エネルギーの作り方や交通の仕組みを、全てCO₂を出ないものに変えてしまう。私達にできるより本質的な行動は、脱炭素化を応援すること。興味を持って調べて発信し、周りの人と話す。脱炭素化を進めている企業や自治体、政治家などを応援することが私たち一人ひとりにできることです。
 これは本当に出口なのか。さらに大きな出口を考えなくてはいけないのではないかと考えます。
 気候変動に関してもCO₂が出なくなったとしても、それが本当に幸せな脱炭素社会になっているかは、もしかしたら別問題です。CO₂は出なくなったかもしれないけれども、すごく格差があるなど何かあまり幸せでないような世界になっているいかもしれない。もっと大きな出口を目指して行かなくてはいけないです。  今回、僕はこの答えを持っていません。このことはみなさんと一緒に、これから考えていきたいと思いますので、ぜひ、みなさんも気候変動問題を含めた世界の持続可能性という問題に興味を持って考えていっていただければと思います。


視聴者アンケート

・専門的な話を分かりやすく話して下さったおかげで、より自分事として考えられるようになりました。目の前の生活ももちろん大切ですが、先の未来を生きる世代のことを常に頭において行動していきたいと思います。
・未来に向けて前向きな話が聞けて希望が持てました。みんなで考える契機になると思います。
・丁寧な説明でわかりやすかった。次世代が安心して暮らせる地球であるためにも、世界の持続可能性という問題に興味を持ち、みんなで考えることが重要ですね。

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