誰もがくらしやすい未来へ~10月は東京都消費者月間です くらしフェスタ東京2019
  • 交流フェスタ 見て、聞いて、話そう!
  • メインシンポジウム
  • 東京の農業応援企画
  • エコプログラム
  • 地域会場
  • 協賛事業
【エコプログラム】

イベントレポート

エコプログラム 講演会
「地球にやさしいエシカル消費~オーガニックコットンの先駆者に聞く~」

日  時:令和2年1月23日(木)13:30~15:30
会  場:東京都消費生活総合センター教室Ⅰ、Ⅱ
講  師:渡邊 智惠子さん
      (NPO法人日本オーガニックコットン協会理事)
参加人数:124名

 環境のために私たち一人ひとりには何ができるのか。NPO法人日本オーガニックコットン協会理事の渡邊智惠子さんは、社会事業家でもあり、長く使える品質の良いオーガニックコットン製品をビジネスとして追求することが、社会や環境の問題を解決する糸口の一つになると考えています。参加者に問いかけながら仕事の理念を語る渡邊さんのお話は、エシカル消費の意義を考える良い機会になりました。
 当日の講演の概要をご紹介します。

渡邊 智惠子さん
渡邊 智惠子さん

1 毎日使うコットンの裏側を考える


 コットン製品を使わない日はありませんね。コットンというのは、綿花を摘み、紡績して糸にして、糸を織って布地を作り、さらに染色や縫製などのたくさんの工程を経て製品になります。しかし、一般の綿がコットン製品となる工程中には、いくつかの問題をかかえています。
 綿の栽培はとても手間がかかります。種を蒔く前に、化学肥料、防カビ剤、殺菌剤を土壌に散布します。育つ過程で除草剤や殺虫剤をまき、効率よく品質の良い綿を摘み取るために、落葉剤を使って葉を枯らします。綿の耕作面積は世界のわずか2.1%ですが、殺虫剤は、世界の使用量の15.7%、そのほかの落葉剤などの農薬を合わせると農薬全体の6.8%が使われています(2008年/ICAC(国際綿花諮問委員会)による調査)。このことから、綿花は、かなり環境への負荷が大きい作物だと分かります。
 またインドの綿花畑では、40万人の児童が安い賃金で働かされています。染色や縫製なども、劣悪な労働環境や安価な労働力に頼って行われている場合があります。2013年に、バングラデシュのダッカ近郊で、縫製工場が入居しているビルが崩壊しました。この産業事故は、グローバル展開する欧米や日本の大手衣料品業者の社会的規範について、論議を呼びました。
 “もの”には適正な値段があります。消費者には、「安いには訳がある、安さは何かを犠牲にしているからではないか」と考えてほしいのです。

2 オーガニックコットンとは


 オーガニックコットンとは、オーガニック生産の基準に準じて、2~3年以上農薬・肥料を使用しない農地で栽培したものです。さらに遺伝子組換え種子を使わないこと、生産工程での化学物質使用の基準をクリアすること、労働の安全や社会的規範を守って製造されていることなどが、条件となっています。オーガニックコットンを収穫する時は、地下水をくみ上げるのをやめ、霜が降りて自然に葉が落ちるのを待って収穫するので、環境への負荷が少なくてすみます。
 また遺伝子組換え種子は、毎年購入する必要がありますが、オーガニックコットンは、今年採れた種を来年蒔くといった循環型農業が可能です。さらに公正な価格で綿を買い取ることから、農家の生活を保証します。

3 日本の産地をつなぎ、メイドインジャパンにこだわる


 私がオーガニックコットンのビジネスを始めたのは1990年代、今から30年ほど前です。日本で初めてオーガニックコットンの輸入を始めました。
 赤ちゃんにまず必要なのは、おくるみですね。だから私は「衣食住」で一番大切なのは「衣」だと思います。50年ほど前までは、日本でも各地で綿が栽培されていて、小さな紡績工場があり、その地方の特徴のある織物文化がありました。海外から安価な繊維が輸入されるようになり、国産綿は栽培されなくなりましたが、まだ日本各地には、特徴ある糸や生地や、製品の技術が残っています。私達は日本の産地をつないで、一つの日本工房としてものづくりをしています。
 例えば私の会社のオーガニックコットン製品の場合、原綿はアメリカ・テキサス州のものですが、紡績と縫い糸は富山県富山市、レースは栃木県足利市、生地は和歌山県和歌山市、縫製は長崎県壱岐市で行うなど、日本の技術を利用しています。
 個性豊かな日本の技術は世界No.1です。だからメイドインジャパンの製品には世界一の魅力があり、海外の展示会でも高く評価されます。日本にしかできないことを極めることで、オーガニックコットン製品の値段が高くても、もっと大勢の人が使うようになると思うのです。

4 ビジネスで人に夢と希望を


 私は23歳の時からずっと働きっぱなしで突っ走ってきました。
 東日本大震災が起こった時、一夜にして仕事がなくなった人の辛さを思い、どうすれば被災地に寄り添えるか考え、オーガニックコットンの仕事が、最大の復興になると思ったのです。
「東北グランマの仕事づくり」というプロジェクトは、岩手県久慈市、陸前高田市、宮城県石巻市を拠点に始まりました。最初の年は、1個1,000円のクリスマスオーナメントを50人の女性に25,000個発注し、売り上げのうち800万円を工賃にあてました。この仕事を請け負っている方が、「家族も家も失い、自分だけが助かって申し訳ない気持ちだった。今、心の支えは、針と糸で仕事をすることです。朝起きて今日する仕事があるというのが一番大事。やればできるんだな、自分でもできるんだなと思う。」と話されていました。仕事が、いかに私たちに生きがいを与えてくれることか。
 また、福島県では、風評被害や後継者不足などにより、野菜や米などが栽培困難になった遊休農地や耕作放棄地が年々増えました。
 それなら食用の作物ではなく、塩害にも強い和綿を植えましょう、というのが「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」です。収穫された綿をすべて買い取り、売り上げを還元することで、生産者と消費者をつなげて復興の力としています。
 さらに、北は福島県、南は鹿児島県奄美市まで、全国各地の協力綿花畑から、一律1キロ1,000円で綿花を買い取っています。国内の綿花自給率0%をプラスへと増やしていき、農業の振興や耕作放棄地の減少につなげていきたいと思っています。
 今後は、「綿栽培ツアー」なども実施して、「自分たちが着ているものは畑から育っている。はじまりは土。」ということを、広く実感してもらいたいと思っています。

会場の様子
会場の様子

5 子供たちにきれいな地球を残したい


 これからの大きな大きな問題として、海洋プラスチック問題があります。私は、毎年お正月に、鹿島の海へ日の出を見に行きますが、今年はごみの山がいくつもあり、砂浜の面積もずいぶん小さくなっていて、びっくりしました。
 コットン製品も化繊の衣服も、洗濯するとマイクロファイバーが流れ出します。綿は、生分解性が高いので土に還りやすいですが、ポリエステルは、ほぼ分解せずに残ってしまいます。河川や海に流れたマイクロプラスチックは、飲料水や海塩にも含まれています。一人が一週間にキャッシュカード一枚分のマイクロプラスチックを摂取している可能性を指摘する研究結果も報告されています。(2019年/オーストラリアのニューカッスル大学の研究チームによる発表)
 どうしたらごみを出さないようにできるか、みんなで毎日考えましょう。私たちはできるだけ服を捨てさせない「リプリ プロジェクト」で、リサイクルに取り組みます。まずオーガニックコットンの製品を生成りで楽しんでもらいます。汚れたりほつれたりした部分は、栗や柿渋などの植物染料で染め直したり、刺繍したり、他の生地を縫い合わせたりして、新たな魅力を生み出し、寿命を延ばします。それでも不要になったものを集めて分類します。そして、まだ着られるものは、東南アジアなどで必要としている人へ送り、使えないものは、ほぐして繊維に戻し、詰め物の綿や、糸、紙にしたりして、新たな製品に作り替えます。
 ネイティブアメリカンに伝わる言葉に「セブンスジェネレーション」というものがあります。「私たちの行動は7世代先まで影響するから、考えて行動するように」という戒めだそうです。
 みなさんは環境のために何をしていますか。私達は、子供たちのために、今、環境破壊をストップする必要があります。消費者の皆さんにできることは、たくさんあります。新しいものを買うときは、値段だけではなく、長く使える品質の良い生分解性のものを選んでください。さらに工夫して長く使い、とにかくごみを出さない生活をすることが大切です。

PAGETOP