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【東京の農業応援企画】身近な都市農業を知ろう

イベントレポート

日  時:平成30年12月4日(火)
      14:00~16:30
会  場:中野サンプラザ13階コスモルーム
講  師:松永 和紀さん(科学ジャーナリスト)
主  催:東京都消費者月間実行委員会
      東京都農業経営者クラブ
      (一社)東京都農業会議
      (公財)東京都農林水産振興財団
参加人数:149人
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松永 和紀さん

 はじめに、東京都消費者月間実行委員会 棚橋節子委員長、(一社)東京都農業会議 青山佾会長、(公財)東京都農林水産振興財団 影山竹夫理事長から開会の挨拶があり、続いて科学ジャーナリストの松永和紀さんから、食の安全について科学的知見に基づいた講演がありました。当日の講演概要をご紹介します。

「自然・天然は安全で人工・合成は危険」は間違い

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会場の様子

 食品のリスク、毒性、安全性に関する一般的なイメージは、「食品とはそもそも何の問題もリスクもない。これに添加物や農薬がついて汚染されるので、添加物や農薬を除去すれば全く問題がないものに戻る」です。専門家は「食品は多様なものを含んでいて、実はリスクや安全性に懸念のあるものも多く、管理が悪くなると、それが拡大し、食べられなくなったり、非常に深刻な食中毒を引き起こしたりする」とみています。「全体をどう管理していくか」ということを考えなくてはいけないというのが、専門家の考えです。
 具体的に食品に含まれているのは、量として多いのが栄養成分ですが、その他に天然の物質(味、香りなどに関わる物質、健康効果を持つかもしれない成分、毒性物質、発がん物など)が含まれ、これに、微生物が付いている場合や、カビが毒性を作っている場合もあり、また、製造工程で自然に発がん物質ができることがあるということも分かってきました。
 例えば、加熱調理で発がん物質が発生する事例として、肉や魚を焦がしてしまった時や燻製工程などでできるヘテロサイクリックアミン類、多環芳香族炭化水素類があります。アクリルアミドは、ポテトチップスやフライドポテトに多く含まれていますが、アミノ酸(アスパラギン)と一部の糖類を含む食品を120℃以上で加熱した時にできるので、野菜炒めやカレーを作るときの炒め玉ネギなどでもできています。しかし、そればかりを食べるという人はいないし、バランスよい食生活のなかでほどほどに抑えられています。加熱調理は、食品をおいしく食べやすくして殺菌効果もあります。加熱することで食品の安全性がグンと上がっておいしく食べられるのです。
 もう一つの事例がカビです。カビもいろいろあって、毒性物質を作るカビがあり、野菜や穀物の栽培過程でそのカビが付いてしまう場合があります。保管段階でもカビは増殖しカビ毒も増えたりします。これも天然毒として、制御しないといけないものです。

化学物質や微生物の体への影響は、それを食べる量により変わる

 「どんな物質を食べるか」「それをどれだけの量食べるか」、この二つが大事です。量によって影響は全然違います。どんな化学物質も、たくさん食べると体への負の影響は深刻になります。砂糖も食塩も一度にたくさん食べると死に至ります。でも、私たちは上手に調節して食べています。発がん物質は加熱調理などで「ゼロ」にはできませんが、合理的に達成可能な範囲で低くし、バランスよく食べると大丈夫という研究が、たくさん積み重なってきています。

農薬の説明

 農薬は、未だに「悪い」というイメージがあります。現実には、農薬の管理はとても厳しくて、簡単に農薬を開発してどんどん使うという時代ではないのです。急性毒性の観点から見ると、1950~60年代は毒性の高いものが使われていたこともありましたが、制度が厳しくなって、今は毒性の高いものはほとんど使われず、なおかつ、それをよくよく管理して使うという風に変わっています。「使う量が違うと影響が全然違う」ということを、一つ大きなポイントとして覚えてください。
 では、なぜ農薬を使うのか。農家は決して、怠けるために使うのではありません。一定の面積で作物をなるべく沢山収穫したいと思って、きちんと管理しているのが現代の農業です。しかし、野菜は品種改良などをしており、生き物としては弱いので、雑草に負けたり、病害虫が大繁殖してしまうことがあります。そういうものをくい止める手段の一つとして農薬があります。農薬の値段は高いので、それだけに頼る農業はもうできません。いろんな工夫をして、その上で、必要な時だけ農薬を使うことにしています。その努力があり、妥当な値段で安定的に私たちは野菜や米を食べられるのです。
 以前、国産小麦を栽培する時に毒性のカビが付いて増殖し、毒性物質を多く含むことがわかって、大問題になりました。その時に、「農薬を選択して適期に防除する」というのも対策の一つとして農林水産省の指針が打ち出されました。農薬を適正に使う方が、むしろ食品のトータルの安全性としてはレベルアップするということがあるのです。
 このように、全体を管理するということが大事です。そういうことを、実際に農業者はやっています。それに加えて、安定生産、環境影響、経済性など様々なことを考えているのです。その努力を評価していただきたいと思います
 「有機農産物だから安全、栄養価が高い」は科学的には根拠に欠けています。有機や無農薬でカビや微生物をどのようにリスク管理しているか、ここをおさえておかないとトータルでの食の安全はクリアできません。
 私は、決して有機や無添加を否定しているのではありません。消費者に多様な選択肢を提供する中に有機があるのはいいことだし、農業者が自分の特徴をアピールする上でも価値があると思います。
 まだ農薬にも問題点は残っているし、いろいろな問題を解決してより高みを目指していくことを続けていかなくてはなりません。しかし一方で、気候変動により世界中で病害虫の被害が増えるなどの問題も発生しており、そういう対策として、農薬というツールも農業者には上手に使っていただきたいと思います。
 一つのことだけを考えて対策を講じると、知らない間に他の有害物質が増えてしまったり、有用物質を食べられなくなったり、食料の安定供給がおぼつかなくなったりといった別の問題が生じます。総合的な視点、思考を持って、情報を判断してほしいと思います。

微生物管理の重要性

 食中毒対策は、とても大切です。毎年2万人前後の食中毒患者が出ており、その9割は微生物が原因です。微生物による食中毒は身近にあるが故に気をつけていないし、ニュースでも報道されません。しかし、実は野菜が原因とみられる食中毒も少なくありません。生で食べるときは「しっかり洗う」ことが大事です。洗うことで菌を除去して安全な状態にできます。
 また、食品衛生法が改正されて、食品事業者に対するHACCPに沿った衛生管理の制度化も進められています。


 生産者や事業者の方は、安全性のレベルを上げようと一生懸命頑張っています。しかし、まだ農業者と消費者の間には暗くて深い川があるように思われます。
 私たちメディアが情報提供ができていないという問題もありますが、農業者と消費者がお互いに歩み寄って情報交換し、お互いに支援するということができたら、ハッピーな世界ができると思います。
 消費者の方には農業者の声を聞いて欲しいし、農業者は遠慮せず、いろいろなことを話して消費者の反応を知って欲しいです。そしてまた頑張っておいしいものを作ろうと思っていただきたい。本日の話を、皆さんの議論のたたき台にしていただければ幸いです。

【農業者・消費者交流会】

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交流会の様子

 講演会後は、消費者・生産者・行政のメンバーがグループに分かれ、松永さんにもご参加いただいて、交流を行いました。生産者からは消費者に伝えたい自分の農業へのこだわりや努力、工夫などが話され、生産物の紹介もありました。消費者からは、日頃不安や疑問に思っていることが質問され、生産者の具体例を挙げながらの説明により、安心感も高まり、「東京の生産者が作ったものを食べてみたい」という思いも膨らんだようでした。また、行政やJAには、顔が見える身近な消費者への有用な情報提供や、販売ルートの確保という課題も出されました。
 生産者や消費者が、生産、購入することの大切さを実感し、また、顔を合わせて話すことで、お互いの理解と信頼を深めることができた交流会でした。

【参加者からの主な感想】

  • 知ることの大切さ。自分が何に重点をおくか、気がつくきっかけになった。
  • 消費者は食品の保管、カビ、菌等にもっと気を向けることが必要。農業者は努力して良いものを生産していることがわかってよかった。
  • 消費者の方が都市農業に強い関心をお持ちで、よい交流がもててよかった。(農業者)
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