もっと広げようコミュニケーションの輪~未来を拓く消費活動~10月は東京都消費者月間です くらしフェスタ東京2018
交流フェスタメインシンポジウム東京の農業応援企画エコプログラム地域会場協賛事業
【メインシンポジウム】ロボットがもっと身近なものになる!

イベントレポート

場 所:東京ウィメンズプラザホール
日 時:平成30年11月1日(木)
     13:30 第1部 ミニコンサート
      高市 紀子さん(フルート)
      諸岡 由美子さん(チェロ)
     14:10 主催者挨拶
      東京都消費者月間実行委員会
      委員長 棚橋節子
     ((公社)日本消費生活アドバイザー・
     コンサルタント・相談員協会)
     14:15 第2部 講演
      下山 勲さん
      (東京大学IRT研究機構 機構長)
     15:45 閉会
参加者:181人

 東京ウィメンズプラザホールにて、くらしフェスタ東京2018メインシンポジウムを開催しました。
 2足歩行ロボットの研究で知られる、東京大学IRT研究機構 機構長の下山勲さんを講師にお招きし、少子高齢社会にマッチした、ロボットと一緒に作る「近い未来」の暮らしについてご講演をいただきました。 
 講演には手話通訳をつけ、耳の不自由な方や手話通訳を勉強している方々、また、保育を希望する若い層の参加がありました。
 200人近くの来場者からは、今後の暮らしに大変期待が持てると好評をいただきました。

講演会

 講演内容の概略をご紹介します。



(下山 勲さん)

1 少子高齢社会で心身ともに満足するために
 東京大学IRT研究機構では、少子高齢社会に対応した情報技術(IT)とロボット技術(RT)との融合を研究しています。IRTとは、Information and Robot Technologyの略です。
 日本には、少子高齢社会の課題を解決し、日本型モデルを世界に提示する課題先進国として、企業や経済活動を巻き込んだイノベーション(社会変革)が必須です。誰がイノベーションの先頭に立つか、その問題解決の一つにロボットがあります。



(講演の様子)

2 ロボットの研究は生物を参考に!
 ロボットの研究は、生物を模倣するのではなく、観察して、参考にしてきました。生物が持つ特徴をロボットの機能に置き換えるためには、理屈が分かった上で、それをもとにロボットを作っていかなければなりません。
 2足歩行、4足歩行(動物)、6足歩行(昆虫)には、安定な歩行や重心の変動についてそれぞれ特徴があります。特に6足歩行は、重力を利用しない安定した歩行をします。それらを様々な実験で解明しました。
 また、飛翔の仕組みをクロアゲハやショウジョウバエで実験したり、カイコガの雄が雌のフェロモンを触覚で感知して雌に向かって羽ばたきながら近づくことを神経行動学から解明したりして、ロボットへと応用しました。


3 少子高齢社会の支援ロボット
①少子高齢化の課題
 国立社会保障・人口問題研究所発表の「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」によると、2055年には日本の総人口は8,993万人まで減少する一方、高齢者率は41%と、2005年の2倍になります。また、世帯構成は変化し、2025年には標準的なファミリー(夫婦と子)は、全世帯の4分の1になり、単身、高齢夫婦、要介護世帯が増加し、介護を家族に託すことが困難になると予測されます。

②IRTがもたらすイノベーション
 少子高齢社会に求められるのは、高齢者の活動幅を拡大し、自立した生き方を支援し、さらに介護負担を軽減することです。それらのためには、家族や社会の理解と支援、社会制度改革、外国人の受入れなどのオプションがありますが、オプションの一つとしてアシスタントロボットなどIRTによる支援もあります。
 これにより、GDPに反映されない家庭内活動の生産性の向上、新規雇用の創出、低炭素社会実現への貢献などの経済的、社会的波及効果も考えられます。

③家庭内ロボットへの受容性
 家庭内にロボットが入ってくることがいいと思うかどうか。この観点から、20代から50代の女性400人に調査(IRT研究機構・電通総研共同調査)をしたところ、家事の負担感が大きく、ロボットに代替してもらいたい作業として、食事の後片付け、掃除機・モップかけ、風呂掃除などが挙げられました。


4 IRTの描く将来ビジョン―ロボットのある未来の暮らし―
①パーソナルモビリティロボット(PMR)
 高齢者の、バリアのない安心・安全な移動には強いニーズがあり、それを支援するのがパーソナルモビリティロボット(PMR)です。高齢者が自立して移動できることは、健康に生きていくための一つの大きなポイントです。
 人が屋外で搭乗するタイプの屋外用PMRは、車いすを意識した一人乗りのロボットです。これは、例えば地図データをダウンロードしておけば、どこに側溝や縁石があるかをセンサで感知するので、自動で安全な移動が実現できます。
 また、屋内用PMRでは、コンピュータにつないだ天井カメラにより24時間データを取っているので、人の活動ログにより異常状態を検出したり、健康モニタリングセンサで日々の健康状態を計測したりできます。

②アシスタントロボット(AR)
 被介護者のいる家庭などの家事負担を減らし、暮らしを支援するために、アシスタントロボット(AR)は役立ち、ロボットならではの情報を利用したサービスが実現できます。
 例えば、洗濯機についているバーコードやQRコードをロボットが読み込むことにより、洗濯機の操作方法を自動でダウンロードしてロボットが洗濯します。
 また、食器にバーコードをつければ、食器の形状などを認識して、食器の後片付けをします。
 家庭内の物の置き場所も管理してくれます。人間が最後に置いた場所を忘れても、ロボットが片付けを記憶しているので、物理的に検索し、どこにあるか教えて「思い出し」を支援してくれます。


5 市場規模
 では、いったい幾ら位なら購入するでしょうか。電通総研の調査によると、パーソナルモビリティロボットは、販売価格が100万円のとき、需要台数は約1,720万台(17.2兆円)とのことです。購入理由は、40代は身の回りの高齢者のために、60代は車代わり、自転車代わりに自分で使うためとなっています。
 アシスタントロボットは、販売価格が100万円のとき、需要台数は約1,080万台(10.8兆円)です。購入理由は、40代は家事や子育ての負担軽減、70代は家族を頼らず自立して生活したいためとなっています。


6 技術的な課題と非技術的な課題
 ロボットは、まだ家庭には普及していません。産業用ロボットやパーソナルロボットはありますが、家庭用ロボットは量産化されず、高価です。安価でないと世の中に普及しませんが、普及するには他にも様々な課題があります。
 例えば大きすぎる、堅い、重い、大きな消費電力、バッテリの容量不足などの技術的な課題が挙げられます。
 さらに、非技術的な課題があります。パーソナルモビリティロボットの道路交通法への対応、安全認証、不正アクセスの防止・プライバシーの保護、事故責任、ロボット対応保険の検討、標準化、ロボットに対する社会の受容性などです。
 これらの課題を踏まえて、IRT研究機構として、少子高齢社会の暮らしにロボットを導入していくということを、前に進めていきたいと思います。

会場からの質問に答えて

●質問
 このようなロボットが生活に入ってくることは大変期待が持てます。ロボットが私たちの暮らしにやって来る社会は、どれぐらいで実現しますか。


●回答
 技術的な課題は10年のスパンで解決すると予測します。特に病院や介護施設で、ロボットは活躍するでしょう。
 一方、ロボットが公道を走り、社会のあらゆる所で見られるようになるには、30~50年はかかると思います。
 人間の心がロボットに対して寛容になる期間は、予測がつきません。ロボットを使いながらゆっくり進むと思います。
 しかし、例えば短期間で携帯電話が普及し、高齢者が容易に活用している現実を見ると、ロボットの普及もポジティブに考えられると思います。

ミニコンサート


(フルートとチェロによるミニコンサート)

 講演に先立ち、フルート奏者の高市紀子さんとチェロ奏者の諸岡由美子さんによるミニコンサートを開催しました。晩秋の午後のひととき、八木節やリベルタンゴなどの曲目をお楽しみいただきました。


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