もっと広げようコミュニケーションの輪~未来を拓く消費活動~10月は東京都消費者月間です くらしフェスタ東京2017
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【エコプログラム】

イベントレポート

日  時:平成30年2月6日(火)
      13:30~15:30
場  所:東京都消費生活総合センター17階
      教室Ⅰ、Ⅱ
講  師:小原 玲さん(動物写真家)
参加人数:109人

 自然災害や異常気象など、私たちは日々のくらしの中で、地球温暖化の影響を感じることがあるのではないでしょうか。動物写真家の小原玲さんは、世界各地で「かわいい」動物を撮影しながら、地球環境の変化を実感するそうです。小原さんが撮影した写真を見ながら地球の温暖化の現状をお聞きし、消費者として出来ることについて考える機会としました。

1 「歴史的な一枚」は、「残念な一枚」だった

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小原玲さん

 1980年代は、報道写真家として世界各地を取材しました。1989年の天安門事件では、各国のメディアが避難していく中で最後まで取材を続けました。その時撮った、民主化を求めた学生たちが手をつないで戦車を止めている写真は、歴史的なスクープ写真としてアメリカの写真誌「LIFE」でベストオブライフに選出されました。世界中の報道写真家が憧れる名誉なことです。
 しかし、私にとっては残念な写真でした。LIFE誌は「学生たちが戦車を止めている写真」としていましたが、本当は「学生リーダーたちが、学生が戦車に向かうのを止めている写真」だったのです。学生たちが、手をつなぎ、戦わずに撤退して最後まで非暴力を貫こうとしていたということを伝えることが出来ませんでした。

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会場の様子

 その後は、紛争地帯の難民キャンプなども取材しました。本当に悲惨な現場で、写真を撮られる側、撮る側、見る側、みんなが悲しくなるような写真を撮りました。しかし、本当に伝えたいことはほんのわずかしか伝えられず、悲しさや悔しさが心の中にたまってきました。また、より悲惨な場面を探し回っている自分に気付き、辛くなってきたのです。

2 「かわいい」写真は「楽しい気持ち」がそのまま伝わる

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 そのような時にたまたまアザラシの赤ちゃんの写真を撮りました。「かわいい」と、興奮し感動して、小理屈を考えず、写真を撮る楽しさを思い出しました。
 ある時電車の中でたまたま見かけた女性が、そのアザラシの写真が掲載された雑誌を眺めていました。その女性は、写真を何分も眺め、定規を当ててきれいに切り抜いて手帳にしまいました。
 「楽しい気持ち」がそのまま伝わったと、とてもうれしかったです。それをきっかけに動物写真家に転身したのです。

3 流氷が育てるアザラシの赤ちゃん

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 アザラシが子育てをするカナダの流氷の海は、360度人工物の見えない、地球上で一番広い大自然です。アザラシの赤ちゃんは、どこまでも続く流氷の上でゴロゴロしながらおっぱいを飲んでは昼寝し、1日に2キログラム太り、ぐんぐん大きくなります。お母さんはこの間断食して赤ちゃんを育てます。
2週間たつとお母さんが突然いなくなり、赤ちゃんは巣立ちすることになります。最初は鳴いているだけだったアザラシの赤ちゃんたちは、次第に集まり、集団で氷の上を移動しながら育ち、丸々と白かった体にも黒い毛が生えて引き締まってきて、海に上手に潜れるようになり、魚を獲ることを覚えます。こうして赤ちゃんたちが独り立ちするまで、流氷がシロクマやシャチなどの天敵から赤ちゃんを守っているのです。

4 流氷の異変

 アザラシの赤ちゃんが育つために欠かせない流氷ですが、1998年には異変が見られ始め、2002年には、普通なら見渡す限り流氷の海になるはずの季節に、氷がボロボロになり海面があちこちに見えていました。カナダ政府によれば、この年のアザラシの赤ちゃんの75%が死亡した可能性が高いそうです。
 この時すでに地球温暖化の可能性が言われていましたが、産業や経済への影響を懸念してなのか、ほとんど取り上げられませんでした。
 2007年にはボロボロの氷が波立って赤ちゃんが海に落ちて育たず、およそ20万頭が死亡したとも言われています。

5 地球温暖化はとっくに始まっている

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 海の流氷の変化からもわかるように、地球温暖化は決して未来の話ではありません。カナダのマドレーヌ島周辺では、流氷の上でのアザラシウォッチングが人気ですが、2010年以降、流氷が少なく中止になることも度々あります。

6 「好き!」なものは大切にしたい

 私は小学校に講演に行くこともありますが、子供たちに「温暖化を防ぐにはどうすればいいと思う?」と聞くと、「エコバックやマイ箸を使う」「省エネ」「リサイクル」という答えが多いです。そういうことは小さな一歩にはなるかもしれません。
 しかしもっと大切なのは、「自然が好き」「美しい」「かわいい」と思う感性だと思います。好きな自然は大切にするし、見て、遊んで、観察します。そうするうちに、自然は何を喜ぶのか、子供が自然の中から見抜いて、人間と自然の共生を考え、試行錯誤して、今やっていることはこれで良いのかと確かめ算をしながら少しずつ進むことが出来るのです。ずっと考えながら自分の中で解決することが、いちばん力があると思います。
 例えばアスファルトの隙間から一本の草が生えているとすると、自然はこの場所を草原にしたいと望んでいると考えられます。もしも地球上のアスファルトを全部剥いで木を植えると、地球温暖化の解決につながります。しかし人間はそれを望みません。ではそのかわりに屋上緑化をしたり、今ある森を大切にすればいいと考えることができます。

7 消費者の力

 また、どんな生き方をしたいかを考えると、どんなものを買うのか考えます。そうして消費者は、企業や社会を動かします。社会を変えることができるのは、消費行動です。
 今、自分や社会がやっていることで足りないことは何かに気付き、何が好きでどんな生き方をしたいかを考えて生活することが大切だと思います。

会場からの質問に答えて

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Q1:動く動物をうまく撮るコツを教えてください。
A1:友達目線とお母さん目線の2つを意識することです。私は氷に転がって、アザラシのお母さんと同じ目線で、アザラシの赤ちゃんの写真を撮っています。
Q2:相当寒いところでどうやってあれだけの写真を撮っているのですか?
A2:いつどこに行けば撮れるか情報を収集することが大切です。報道写真家時代に情報収集の技は身につけました。また自分が何をしたいかを、通じる英語で伝えられることも大切です。
Q3:水中撮影の後水から上がって暖をとる準備はしてあるのですか?
A3:ないです。タオルでふくだけです。一度ドライスーツに穴が開いていたことがあり、ものすごく寒かったのですが、自分で撮った写真を見て「このために頑張った!」と思い、乗り切りました。
Q4:今の生活環境を変えていく責任を感じますが、どうしたらいいですか?
A4:身近な所から自然を見ることをスタートしてください。身近な自然に興味を持つものが一つあると、現況が広く見えてきます。自分は何が好きかという感性がいちばんの原動力です。

参加者の感想

・アザラシの赤ちゃんの可愛さを失くしたくないと思った。改めて考えさせられた。画像を通して見られてよくわかった。
・小原さんのお話は大変心地よく、あっという間にいろいろとたくさんのことを教えていただきました。報道カメラマンからなぜ自然や動物にご自身が目を向けた経緯もなるほどと私も共感しました。自分や周りの人にとってもやはり大切なことは外側にあるのでなく、自分の内側にすべて答えがあることも改めて学びました。環境について日頃から温暖化を意識して行動していましたが、自然に目を向けて好きを大切にしていきたいと思います。
・心に響く写真の力を感じた。お話もとても面白く、自然の温暖化の深刻さを実感した。私は長野出身で、自分自身が温暖化を感じたのが1988年でした。氷があまり張らなくなり、スケートができなくなったからです。これがアザラシやシロクマまでつながっているなんて考えてもみませんでした。
・可愛い動物写真から始まりましたが、非常に内容が深く、自身の消費行動を振り返るとてもよい機会になりました。
・環境適応から環境醸成の選択、使い方を磨いていく動機づけになりました。孫たちとの接触に生かしてゆきたい。

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