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【東京のがんばる農業応援企画】 身近な都市農業を知ろう

イベントレポート

日 時 :平成28年12月9日(金)14:00~16:30
会 場 :中野サンプラザ13階コスモルーム
講 師 :小谷 あゆみさん(フリーアナウンサー/農業ジャーナリスト)
主 催 :東京都消費者月間実行委員会、東京都農業経営者クラブ、(一社)東京都農業会議
参加人数:111人
小谷あゆみさん  東京都消費者月間事業では「東京のがんばる農業応援企画」の第2弾として、「食と農セミナー」を開催しました。
 フリーアナウンサーで農業ジャーナリストの小谷あゆみさんから、都市農業の価値を再認識して、東京にしかない農業を作り出そうというお話をいただきました。当日の講演概要をご紹介します。

「農」には感動がある

 アナウンサー時代に農業をテーマにした番組を企画し、野菜づくりや棚田での米づくりを体験取材したことで、農には生産現場というだけでなく、景観としての美しさがあり「よろこび」「感動」「物語」があることを実感しました。
 東京で暮らすようになったとき、区民農園があると知ってすぐに申し込みました。都会の区民農園は倍率が高く当選しにくいので、今はべランダでの野菜作りですが、野菜の生育過程にある物語とその感動を、多くの人に発信しています。
 私たちが食べている食料は主に地方の農村で作られていますが、その産地や生産者に対して、感謝や敬意が払われているでしょうか。自分たちの食べるものなのに、当事者意識が不足している気がします。そこで私たちみんなが「一億総農家!」になって、暮らしに「農」を取り入れ農業体験などをすれば、今よりもっと「農」を理解し「農業・農村」をリスペクトするようになるはずです。すると、農地は単に食料の生産地ではなく物語(感動・体験)を売る場となります。

「農」の価値は田畑にある。感動を売りましょう

 都市農業の価値は、人がたくさんいて農業を見てくれるところにあります。農を「見える化」すること、たとえば「体験農園」や農地でのイベントなどで農地を開放することで、「農地」は生産現場だけでなく、都市住民が心を解放する場になります。農地は憩いの場、安らぎの場になり、地域住民にとっても必要なものなのです。
 21世紀は、農のスタイルや価値が変わろうとしています。農の価値は、モノではなく、農業システムという知恵、物語が大事になります。消費者が体験して感動すれば、価値は上がっていきます。「感動」を売る姿勢が大切です。
 農体験やツーリズムを取り入れたある地域では、おばあちゃんたちがおしゃれに、元気になりました。地域の文化や歴史をまるごと「農の価値」として商品化し、それが旅行者やよその人に評価されると、その土地で生きてきた人々に自信と誇りが生まれます。
 農業を「見える化」し、楽しそうな様子を見せる(ソーヤー効果)ことで、都市に農業があることが楽しいと感じてもらえます。「買ってください」というより、買いたくなるようにふるまうことが効果的です。

食と農セミナー

人は何のために食べるのか

 ライフスタイルや心の豊かさが食に反映され、消費者の価値観は年々変わってきています。人間にとって「食」とは、もともとは「食料」でしたが、次第に安全・安心などの付加価値、さらには健康、美容、ブランドが求められるようになりました。
 そして今は「ロハス」「エシカル」「快感」「脳が喜ぶ」「おもしろい」といった要素が食に求 められています。心の充足が優先される時代、満たしたいのはお腹ではなく心なのです。
 健康で持続可能なライフスタイルが求められるようになり、長く繋がる農業として「CSA〈Community Supported Agriculture〉」、コミュニティがサポートする農業が注目されています。「お客さんは友達」すなわち「友産友消」と考えると、生産から加工・流通⇒消費の循環は、お互いを助け合うハッピーな関係になります。消費者も生産者も友達のようにお互いを応援し、生産者も自分だけでなく地域や友達と連携することで、仲良くつながっていきます。
 地域のコミュニティとして「都産都消」という考え方もあります。東京には東京にしかできない農業があるはずです。今はSNSの普及で、広告より口コミが信頼され、「顔の見える」農業どころか、個々の発信から、性格や考え方まで見透かされます。性格で選び・選ばれる時代なのです。

21世紀のキーワード

 21世紀最大の産業は「観光」です。日本らしい農村・農的な空間は、FAO(国連食料農業機関)の世界農業遺産に登録されています。日本の素晴らしい農業遺産の継承は、景観保全になり、地域や環境を守る食が生産され続けることになるのです。
 また健康長寿という観点から、農業と福祉をつなげた「農福連携」として、農作業そのものの健康への効果が期待されています。
 私は「農とは自分の人生を生きること」だと思います。自分の足元を耕す農は生涯現役、究極の自立であり、自分らしく生きることにつながります。できる範囲で自分で作る。できないことを代わりにやってもらうならその友達を大切にする。食べものに責任を持つとはそういうことです。
 これからの時代のキーワードは「持続可能性(サスティナビリティ)」と「多様性(ダイバーシティ)」です。様々な人が共存し、つながって生きる時代、私たちの暮らす東京で、農業を続けていくために、命をつなぐ食べものを作り続けるために、東京の農業を自分のこととしてみんなで考えていきましょう。

【農業者・消費者交流会】

 講演会後の交流会では、消費者、生産者、行政のメンバーがグループに分かれて、交流を行いました。小谷さんの講演の中でも、生産者と消費者がお互いに当事者意識を持つことが大切というお話があったので、顔を合わせて語り合うことで、お互いの思いを知り、相互理解を深める良い機会になりました。
 生産者から、日頃の生産現場での取組、後継者や税金の問題など厳しい都市農業の現状が語られ、そういう中で消費者の「おいしい」の声が励みになっているというお話がありました。
 消費者からは、生産者の生の声がいろいろ聞けて良かったという声が多くあり、東京の農業への理解が深まりました。


(各テーブルで生産者と消費者が活発に意見交換)