イベントレポート
■日 時 :平成29年1月24日(火)13:30~15:30
■会 場 :東京都消費生活総合センター17階教室Ⅰ,Ⅱ
■講 師 :末吉 里花さん(一般社団法人エシカル協会代表理事/フリーアナウンサー)
■主 催 :東京都消費者月間実行委員会
■参加人数:76人

「エシカル」という言葉は、少しずつ私たちの周りに浸透してきましたが、まだよくわからない、耳慣れないという方も多いようです。そこで、一般社団法人エシカル協会代表理事でフリーアナウンサー、また、東京都消費生活対策審議会委員や消費者庁「倫理的消費」調査研究会委員でもある末吉里花さんに、エシカル消費について、ご講演いただきました。
当日の講演概要をご紹介します。
きっかけはミステリーハンター
TBS系テレビ番組「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして、シベリアやキリマンジャロなど世界約70か国の秘境を旅行し、地球温暖化の現状を目の当たりにした経験から、環境問題やフェアトレードに興味を持つようになりました。
やがて、「心ある生産、心ある消費を」をうたい文句に、2015年11月に「一般社団法人エシカル協会」を設立しました。そして、エシカルとは何かを「学ぶ場」「楽しむ場」「伝える場」「つながる場」を作ってきました。
フェアトレードってなに?
フェアトレードとは、「公正な貿易」つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を支援する「貿易の仕組み」のことです。
私たちの周りにある「モノ」は、「だれが、どこで、どうやって」作った製品なのか、モノの裏側にはどんな背景があるのか、なかなかわかりません。「モノ」と背景との間にある厚い大きな壁をなくしていく、これがフェアトレード、ひいてはエシカルの世界を作っていくひとつになります。
「エシカル」「エシカル消費」ってなに?
一般的には、「エシカル」とは「倫理的な」とか「道徳的な」という意味にとらえられていますが、エシカル協会は「人・社会・地域環境・地域に配慮した、おもいやりのあるお金の使い方や生き方のこと」だと考えます。
つまり、「エシカル消費」とは環境に配慮するだけでなく、製品を作っている人たち、作っている地域などに、トータルに働きかけるような消費のあり方です。消費者が、日々の生活の中から社会に関われる消費のことです。
エシカルの概念は、イギリスが発祥地で、日本では2011年の東日本大震災以降、エシカルファッションから広まりました。

エシカル消費ってどんなものがある?
エシカル消費という大きな概念の中には「フェアトレード」を筆頭に、「オーガニック」「地産地消」「障がい者が作ったモノ」「伝統工芸」「応援消費」「動物福祉」「リサイクル・アップサイクル」などが入っています。たとえば被災者が作ったモノを積極的に買うとか、毛皮、ダウン、肉を提供してくれる動物にも配慮するなど、エシカル消費は誰にでも取り入れることができると思います。
エシカル消費が必要なわけ
いま、「貧困・環境・人権」は世界の緊急課題であり、これらを解決していくために「エシカル」という概念は有効な手段です。
例えば、アパレル協会で大量生産、大量消費されている私たちの洋服は、石油や水などの資源の枯渇や気候の変動を招き、環境に負荷を与えています。
その上、コットン栽培の裏側には、農薬による生産者の健康被害や環境破壊が発生し、児童労働も判明し、深刻な人権問題となっています。
先進国の私たちが好んで購入する安価な洋服の裏には、このような途上国の生産者の深刻な格差が存在しているのです。
もしも、世界中の人々が日本人のような生活をすると、地球は2.4個も必要になります。1個の地球が提供できる資源は有限です。その資源を、今の私たちは地球が回復できるスピードよりももっと速いスピードで、しかも、未来の子供たちが使う資源を使っていることになります。人間のことだけでなく、地球に住む動植物にも配慮して、現代の日本の暮らしを本来の「地球1個分の暮らし」にしなければなりません。
認証ラベル
エシカル認証ラベルはありませんが、エシカルにまつわる認証ラベルはたくさんあります。
以下、例を挙げます。商品を選択するときの参考になります。

(配布資料より)
2030年の世界の指標
2015年9月、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)(エスディージーズ)」は、2030年までに世界中で取り組む行動計画です。17分野の目標があり、そのうちの12番の目標は「つくる責任とつかう責任」で、まさにエシカル消費が目標として設定されています。
日本では、2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機に、一般にもエシカル消費が浸透していくでしょう。

消費者にできること
消費者としての権利をぜひ活かしましょう。例えば、なるべく地元の商店や市場で買い物をする、認証マークやラベルを目印にする、お店やスーパーにフェアトレード商品をリクエストしてみる、企業へ褒め言葉を掛けるなど、実行してみましょう。買い物は企業への投票行動と同じで、10人の声が集まったら、マジョリティの意見として企業は考えるでしょう。
つまり、毎日の消費は「個人的」な営みではなく、環境、社会、未来に「影響」を与える行為です。そのことを一人ひとりが自覚して買い物をし、多くの人が実践すれば、社会を変える大きな力となります。
「エシカル」とは、「おたがいさま・おかげさま・足るを知る・もったいない・五方よし(作り手よし・買い手よし・売り手よし・社会よし・未来よし)」という、日本人がDNAで持っている感受性に通じます。「エ」影響を「シ」しっかりと「カル」考えることです。
会場からの質問に答えて
- 毎日が「エシカル」では窮屈なのでは?
生活のすべてをエシカルにするのは難しいですが、選択肢があるときにはエシカル商品を選ぶとか、古くからの洋服を大切に着るとか、できるところから変える、変わっていくことが大切です。
- エシカルの仲間を増やすには?
「楽しい」「ワクワクする」がキーワードです。自分も豊かになると感じると、広がります。例えばエシカル商品を扱っているマーケットに友人を誘うとか、エシカル商品をプレゼントするという方法もあります。
- 断捨離はエシカルですか?
エシカルだと思います。心の整理にもなります。ただ、断捨離で生じたモノをリサイクルで寄付する場合、それをきちんと現地に届けている団体か色々と調べて、結果報告をくれるところを選びましょう。

- 若者に啓発するには?
エシカルは「カッコイイ」「より良い未来に欠かせない」「自分のためになる」というスタンスで、持続可能な社会の実現のために「地球1個分のくらしをしよう」と家庭でも話題にしてほしいです。
参加者の感想
- 講師の豊富な取材経験から世界の現状を知ることができて良かったです。ただ、今の日本では「エシカル消費」が浸透しているとは言いがたいので、東京オリンピック・パラリンピックでどれくらい取り上げられるかが重要だと思います。
- 日常の買い物でエシカルを意識することが大切だと分かりました。
- なんとなく知っている気になっていましたが、知識が深まり、発信や行動の幅が広がると感じました。自分にできることを精一杯やっていきたいです。
- フェアトレードのコーヒー豆を10年近く利用しています。エシカルに取り組む企業やフェアトレード認証商品を調べて積極的に利用したいです。
- 日々の何気ない買い物の背景に、とても大きな事柄が隠されていることを知りました。